その町で生きる人、生きた人、その時間がつながり合うーーー
◇どこから行っても遠い町◇
川上弘美
捨てたものではなかったです、あたしの人生──。男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ主婦と姑、両親の不仲をみつめる小学生、そして裸足で男のもとへ駆けていった女……。それぞれの人生はゆるくつながり、わずかにかたちをかえながら、ふたたび続いていく。東京の小さな町を舞台に、平凡な日々の豊かさとあやうさを映し出す連作短篇小説。
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1.小屋のある屋上
2.午前六時のバケツ
3.夕つかたの水
4.蛇は穴は入る
5.長い夜の紅茶
6.四度めの浪花節
7.急降下するエレベーター
8.濡れた女の慕情
9.貝殻のある飾り窓
10.どこから行っても遠い町
11.ゆるく巻くかたつむりの殻
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おれが決め、誰かが決め、女たちが決め、男たちが決め、この地球をとりまく幾千万もの因果が決め、そうやっておれはここにいるのだった。
ーーー「どこから行っても遠い町」より
「どこから行っても遠い町」です(・∀・)
「都心から私鉄でも地下鉄でも20分ほど」の町にある商店街に住む人たちが主人公の11の短編です。
その商店街に住む人だったり、魚屋さんだったり、予備校の先生だったり、そこに通う学生さんたちだったり、割烹屋さんだったり、……とにかくそこに住む人たちの物語。作品がリンクしているのでどの人たちも必ず2回は登場します。「あ、この人!」と思って読むのはside A、side Bを見ているみたいで見方が変わって面白い。
主人公たちは皆、私たち読者もどこかですれ違っていそうな一見普通の人たちです。でもどこか危うさと「……そんなこと、あるん?」を抱えていて……
彼らは皆、どこか孤独を抱えています。でも彼らはどこかで、誰かと何かしらで繋がっていて関わることで思うところを見つける。劇的に変化するわけではない、けれど確かな変化。その変化が誰かの心や記憶に居座るようになり、死ぬ時も死んだ後も生きるのは面白いことだった、と思えたのなら人生捨てたモンじゃないどころかもはや大勝利宣言ですよ。
「どこから行っても遠い町」でした(・∀・)/
その世界線ではドイツと日本が世界を支配しているのです……(*^o^*)/