キム・リゲット◇グレイス・イヤー 少女たちの聖域◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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"魔力を持った"16歳の少女たちは『グレイス・イヤー』を生き残れるかーーー






◇グレイス・イヤー 少女たちの聖域◇ -The Grace Year-

キム・リゲット 堀江里美 訳



「だれもグレイス・イヤーの話はしない。禁じられているからだ」
ガーナー郡では、少女たちに“魔力”があると信じられている。
男性を誘惑したり、妻たちを嫉妬に狂わせたりできるのだと。
その“魔力”が開花する16歳を迎えた少女たちは、
ガーナーの外に広がる森の奥のキャンプに一年間追放される。
“魔力”を解き放ち、清らかな女性、そして妻となるために。
この風習について語ることは禁じられていて、
全員が無事に帰ってくる保障もない。
16歳を迎えるティアニーは、
妻としてではなく、自分の人生を生きることを望みながら、〈グレイス・イヤー〉に立ち向かう。
キャンプではいったい何が? そして、魔力とは?
生死をかけた通過儀礼が、始まる──。



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ガーナー郡で生まれ育った娘たちは求婚者からヴェールをもらい花嫁になり、母になる。それ以外の道を選ぶと"アウトスカーツ"に通報され、妹たちも迫害されてしまう。



娘は16歳になると"魔力"が開花する。その"魔力"があっては妻や母にはなれないのでそれを取り除く儀式を執り行う。その名前は『グレイス・イヤー』。彼女たちは1年間森の奥のキャンプで集団生活を行い、魔力を明らかにするのだ。……女の子たちには魔力がある、と信じる密猟者の存在に怯え、命を散らしながらも。



ティアニー・ジェームズも今年16歳になり、母や姉たちと同様に『グレイス・イヤー』を迎える。それと同時に誰かの『妻』にされるベくヴェールをもらうことが嫌で堪らない。自分の望むように生きたい。その願いは、その願いを理解していると思っていた幼馴染マイケルによって壊される。彼はわたしを『妻』にしようとヴェールを与えたーーー



『グレイス・イヤー』の初日からティアニーは他の女の子たちから阻害され、剥き出しの悪意に晒される。『グレイス・イヤー』は男や周囲の人間の目を気にせず自由に感情を曝け出すことのできる年なのだ。密猟者のいるフェンスの外に放り投げられたティアニーはそこでさまざまな嘘と真実を知るーーー



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「グレイス・イヤー 少女たちの聖域」です(・∀・)



ようこそディストピア。「侍女の物語」以来の早川書房発フェミニスト・ディストピア行きです。「侍女の物語」とゴールディングの「蝿の王」を組み合わせたディストピア・サバイバル開幕。



……って胸糞悪ぅい!!  なんなんだこの女を「良き妻」「良き母」と品定めするような風習は……口を開かずとも意志を伝えられる花言葉が「自分たちは花のように脆い」と言っているようだ……あと『アウトスカーツ』という名前も嫌だ!

つくづく彼女たちを支配・管理下におきたい、それから抜け出した彼女たちを『始末に追えない』からと迫害したい男たちの欲に塗れるのを感じて仕方がない!



問題の『グレイス・イヤー』あといるよね、支配者的存在になる子も取り巻きもいじめを報いと受け入れる悪くも聡い子も、抵抗する聡い子も! いじめのある女子校の教室って絶対こんな感じ。「ライフ」や「リミット」かよorz 

自分には魔力がある、と信じ込む女の子たちが怖かったです。その中で疎外感と喪失感に襲われるティアニーも……



ディストピア、ディストピア、と連呼している自分ですが実はディストピアがそんなに好きなわけではないんです。考えると気持ちが暗くなるし、どんなに「変わっても」誰もが幸せになる完璧なハッピーエンドが存在しないから。しかしティアニーが掴んだ真実は確かに未来に根付き、その真実は元々種が蒔かれていた。微々であってもティアニーと同じ心と意志を持っている、誰かもーーーそれも生きている人間が未来を、社会を変えようとしている。まるで何も変わらなかったような現実に戻ってもその事実があるのなら、それこそ『恩寵』何じゃないだろうか。



「グレイス・イヤー」でした(・∀・)/ 

東京の小さな町で誰かが、誰かと(*^o^*)/