呉勝浩◇爆弾◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




TwitterもといX: 「https://twitter.com/KYoCaTHouWoR
エブリスタ: https://estar.jp/users/153193524

爆弾の場所を知るのは自称「記憶喪失の」男の霊感のみーーー警察官が命を、信条や、矜持を胸に東京中を奔走する!






◇爆弾◇

呉勝浩



些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。
警察は爆発を止めることができるのか。
爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。



☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆



夜、1人の酔っ払いが居酒屋の店主を殴って野方署に連行された。「スズキタゴサク」というどう見ても偽名くさい名前を名乗るその男は示談金10万を借りる口実なのか「10時ごろに秋葉原の辺りで何かが起こる」と告げる。取り調べをした等々力は一蹴するが、直後の報告を聞いて顔色を変える。ーーー本当に秋葉原で事件が起こった。



秋葉原で起こった事件は爆発事件だった。この男が本物ならあと1時間後、つまり11時に新たな爆弾が爆発してしまう。はたして東京ドームでも爆破事件が起こり、野方署を中心に東京の警察は騒然となる。が、とうのスズキは平然とへらへらと笑い、挙句の果てにはゲームをやろうという始末。その相手を警視庁の清宮が務めるが、そこで出た名前に野方署の警察官の顔が変わるーーー



ゲーム『九つの尻尾』での会話に次の爆破現場のヒントがある? そしてそれを繋げる、かつて恥ずべき不祥事を起こした警察官、長谷部ーーーある警官はスズキに苛立ち、ある警官は長谷部の一件以来冷めた心を見つめ直し、ある警官は己の善と悪、命の軽重を図る天秤の存在に打ちひしがれ、ある警官は仲間を傷つけられあってはならない行動を取ってしまうーーー爆弾の場所を止めること、人民の命を守ることは己との戦いであった。



☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆



「爆弾」です(・∀・)



「このミステリーがすごい!」国内一位作品だけはどんな作家であろうと読もうと決めて早3回目。1回目は戦後、2回目は「どうする家康」で盛り上がる戦国時代、今回でやっと現代が舞台のミステリー。それも爆弾テロというコ○ン顔負けの事件。その場所を仄めかしてははぐらかす、非常にムカつく「スズキタゴサク」に、警察は翻弄されます。



……最初に何の成り行きで「名探偵コ○ン」の名前を挙げましたがコ○ンの世界は誰にとっても優しい世界であることを、数々のミステリー、それも現代ものをたくさん読んでいる人ならいやでも気付いていると思います。コナンや新一のような名探偵もいなければ安室さんや赤井さんのような超人はいない、犯罪者はとことん無慈悲で残酷で、普通の一般市民、それも警察官ですら完璧な善人はいないーーー

爆弾はどこにある!? スズキの目的は!? 長谷部との繋がりは!? というミステリーの醍醐味の他に、人間の、世界の善悪と矛盾、人の命の軽重を問うたり、鋭い社会批判も込められていて確かに「現在」のミステリーです。同じ問いはシーラッハもしていますね。



本書を読んで面白かったのは特定の主人公がいないこと。一応核心部分を突きまくる警察官は居ますが、その警察官は長谷部のことにはノータッチだし、『九つの尻尾』をやるのは別の警察官で長谷部の心に触れるのはこれまた別の警察官。そして警察官とは相性の悪い人間的感情を持った警察官も出て来ます。この話の主人公は「警察」という組織で働く人全員なんですね。誰もが矜持と信念を持っていますが、それが揺らぐことは多々あり、ぽっきり折れてしまうこともある。それでも警察官で在るのは人間や世界を信じるに値する、と信じているからです。そのポリシーを1人でも持っている限り、わたしたちも警察を信じたいと思う。



「爆弾」でした(・∀・)/

19世紀末ロンドンにはシャーロック・ホームズが居た……他の国にも居たって良いよね!?(*^o^*)/