戦争の傷が未だ深い名古屋の共学校の修学旅行で起こった恐るべき殺人事件！
◇たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説◇ -Isn't Only Murder?-
辻真先
昭和24年、ミステリ作家を目指しているカツ丼こと風早勝利は、名古屋市内の新制高校３年生になった。旧制中学卒業後の、たった一年だけの男女共学の高校生活。
そんな中、顧問の勧めで勝利たち推理小説研究会は、映画研究会と合同で一泊旅行を計画する。顧問と男女生徒五名で湯谷温泉へ、修学旅行代わりの小旅行だった──。
そこで巻き込まれた密室殺人事件。さらに夏休み最終日の夜、キティ台風が襲来する中で起きた廃墟での首切り殺人事件！ 二つの不可解な事件に遭遇した勝利たちは果たして……。
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戦争に負け、復興が進みつつあるものの激変を強いられる最中の昭和24年の名古屋。料亭の息子勝利こと「カツ丼」は旧制中学を卒業したがGHQの命令でもう1年高校生をやることになった。それも女の子と一緒に！ 異性といえば母と姉と料亭で働いている従業員しか知らない。戸惑いしかないものの推理小説が好きで所属している推理小説研究会でなんとか男女の友達と仲良く活動している。
夏休み。修学旅行は頭の硬くて古い教員たちのせいでおじゃんになったが顧問の「巴御前」こと別宮先生の提案で映画研究会と合同の旅行をしないかと誘われる。勿論カツ丼たちは大喜び。しかもその前には新入会員も入って来て人数が増えた。けれどその新入会員、咲原鏡子と前に何処かで会ったことがあるような気がして……
ところが行った先の湯谷温泉で一行は評論家の徳永の遺体を発見してしまう！ しかしその場所は鍵のかかった密室だった……そして戻って来た後もキティ台風上陸の日に今度は議員の設楽が首を斬られて殺される……鏡子の秘密、部員たちが抱える傷、別宮は友達で名探偵の那珂に助けを求める。そこで明らかになったのはあまりにも悲しい真実と戦争が生んだ罪だったーーー………
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「たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説」です(・∀・)
2020年、このミス国内編第1位作品！ やっと読めたー。約8ヶ月待ちました。いや買えよ←
作者の辻真先って若いどころかベテランだったんですね。びっくりだ← っていうかコナンの脚本も書いていたのか←
そんなわけで本書。ミステリ以上に戦争直後の日本社会描写が印象的でした。というかそっちばっかり意識行ってました←
名古屋における戦争と空襲に関しては漫画の「あとかたの街」でしか知らなかったのですが、知られているいない関係なく戦争が行われた以上、どこでも地獄だったことを突きつけられた気分です。というか戦争というのはこの世の地獄なんだな。いや地獄は皆、平等に裁かれますが戦争の場合裁かれない者が存在するという時点で地獄よりも地獄的！
戦争が終わった後、東京以外の復興は物理的にも精神的にも相当遅れていてそもそも置き去りにされていたのでは。作者が実際にその空気を知っている、という点で生々しかったです。特に女子部員の鏡子と「姫」こと弥生の身の上話は読んでいてかなり辛かったです。特に後者。電車の中で吐きそうだった。しかしそれでも主人公たちは喜怒哀楽を隠さず生きて何かを成し遂げる、その姿には希望がありました。
自分はトリックよりも動機重視なので昭和24年を舞台にする以上動機は戦争がらみに違いないと思っていました。そしてそれはその通りで更に題名に胸を抉られることに。読む前と後では心が全く違うものに！ これと真逆の台詞は「ブラックジャック」で聞いたことがありますが……誰もそんなこと、言う資格は持ち合わせていないんだ！
うーん、これは本格ミステリでもあるけど社会派ミステリですね、群を抜くのは。
やー、なかなか良かった！ これからこのミス国内外編1位作品は読むことにしよう！←今更
「たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説」でした(･∀･)/
次は久しぶりの多和田葉子です (*^o^*)/