エルスベツ・イーホルム No.1◇赤ん坊は川を流れる◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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赤ん坊が川を流れて来た。それだけで世界が一変した……






◇赤ん坊は川を流れる◇ -Skjulte Fejl Og Mangler-

エルスベツ・イーホルム 木村由利子 訳



離婚して学生時代を過ごした町に戻った新聞記者ディクテ。彼女の誕生日を祝いオープンカフェで盛り上がっていた時、目の前の川に桶に入った赤ん坊が流れてきた。一方親友の一人が勤める病院では新生児が額にいたずら書きをされ、さらにそこで出産した別の親友の赤ん坊が誘拐された。ディクテは赤ん坊を巡る三つの事件の取材に奔走する。デンマークを舞台にしたライトミステリ。



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新聞記者のディクテは娘のローセと共に学生時代を過ごした町に戻って来た。挫折した末の新生活だが町にはオープンカフェで誕生日を祝ってくれる友人達がいる。……が、目の前の川から赤ん坊が流れて来た!?



川を流れてきたその赤ん坊は既に置いてあり、巻かれたタオルにはコーランの一節が……望まない妊娠をしてしまったムスリムの少女の仕業か? ディクテは編集局長カイサーに急き立てられるように記事を書く羽目に。



一方、ディクテの友人イーダ・マリーは妊娠中でアネが助産師として働くスカイビー病院で出産することになっている。ディクテと同様、死んだ赤ん坊が暗い影を落としている。私生活に気掛かりが有れば尚更だ。しかしその直後スカイビー病院で何者かが新生児にいたずら書きをされ、イーダ・マリーの生まれたばかりの息子が何者かに誘拐され……



3つの事件は繋がっているのか? ディクテは新しい人間関係、過去のトラウマに躓きながらもカメラマンのボー、警察官のワーグナーらと共に事件を追いかけていく……



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「赤ん坊は川を流れる」です(・∀・)



題名を聞いてまず「桃太郎」を思い出したのはおそらく自分だけでは無いはずですが←、その赤ん坊が既に死んでいて、その死が発見者の女性たちの心と私生活に暗い影を落としていく、というところが北欧ミステリーっぽい。突然事件に遭遇し、それが私生活を巻き込んでもう戻れないところまで来てしまうことの戸惑い、葛藤、不和の描写が他人事では無い。



読んでいて始終「ライトなミステリって何……?」って感じでした。おそらく珍しく殺人事件が無いからだと思うのですが主人公たちの重〜い私生活を垣間見せられるとライトも何もあったものじゃ無い← というか皆、ホイホイ関係持ちすぎじゃ無い?? ちょっと引くぞ。



作品ではたびたび9.11のことが言及されますが、日本の発表は2015年ですが、本国では2002年なんですよね。9.11直後の情勢とムスリムに対する偏見と無知さが垣間見えます。



主人公ディクテは自分の家庭生活も失敗していますがどうやら少女時代も家族が突然変わってしまって不幸だった様子……「どう家」観て思いましたがあれが関わると恐ろしいですよ。逃げ出すことが悪ならその後全部間違いなんですか、ええ? 次作もあるようなのでそこでディクテが吹っ切れたら良いのですが。



「赤ん坊は川を流れる」でした(・∀・)/

女性に与えられる役目とは、それを与える世の中は、社会は……(*^o^*)/