エヴァ・ビョルク・アイイスドッティル No.1◇軋み◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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何故彼女は長年足を踏み入れなかった故郷で殺されなければならなかったのか?

 

 

 

 

 

◇軋み◇ -Marrið I Stiganum(The Creak on the Stairs)-

エヴァ・ビョルク・アイイスドッティル 吉田薫 訳

 

 

同居していた恋人との関係が唐突に終わり、エルマは長年勤めたレイキャヴィーク警察を辞め、故郷アークラネスに戻った。
地元警察に職を得て間もなく、観光名所であるアークラネス灯台の麓の海岸で女性の不審死体が見つかる。所持品はないに等しく身元の特定が進まなかったが、数日後、妻が行方不明になったという届け出がある。死体はクヴァールフィヨルズルに住むエリーサベトというパイロットのものだった。
夫によると、エリーサベトは死体となって発見される前日からカナダ便に搭乗し、三日後に帰宅する予定だった。だが航空会社に確認すると、フライトの朝エリーサベトは自ら職場に病欠の連絡をし、行方をくらましていたという。さらにエリーサベトは子どもの頃アークラネスで過ごしていたが、なぜそこへ行ったのかがどうしても腑に落ちないと言った。
「妻はあの町に行くのを嫌がりました。いくら誘っても絶対に行かなかった。だから買い物に行くのはいつもレイキャヴィークかボルガルネースでした。アークラネスに行くほうがずっと便利なのに。異様なほどあの町を嫌っていた。憎んでいたといってもいい。」
エルマは過去を掘り始めた。

小さな港町ゆえの濃密な人間関係――時の堆積の中に深く埋もれていたエリーサベトの死の理由とは?
CWAニュー・ブラッド・ダガー賞(英国推理作家協会賞新人賞)受賞! 期待の新鋭による北欧アイスランド・ミステリの新たな傑作が登場!!

 

 

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恋人ダーヴィスと唐突に別れてしまったエルマはレイキャビーク警察を辞めて故郷アークラネスに戻った。……2度と戻ることはないと思っていた故郷に。エルマはアークラネス警察に籍を置き、通っていた学校や共通の知人を通してつながりのある人たちに囲まれ、新しい生活を始めた。

 

 

事件が起こったのはそんな時だ。観光名所だけと人気のないアークラネス灯台で女性の死体が見つかったのだ。数日身元が分からなかったがやがてエリーサベトという名前のパイロットであることが分かる。

 

 

しかしアークラネスは最近観光名所として名が知れるようになったが町自体は小さくて住人は誰から何まで顔見知りで学校名が分かれば誰だが分かるほど密で閉鎖的だ。……それなのに誰もエリーサベトには見覚えがなかった。それもそのはずエリーサベトは子どもの頃に引っ越して以来アークラネスには足を踏み入れていなかったのだ。しかもアークラネスの近くに寄ることも病的に嫌がっていた。……まるで憎んでいたみたいに。一体何故……?

 

 

エルマたち警察はエリーサベトの今と過去を少しずつ調べ始める。浮かび上がるのはアークラネスの名士、ヘンドリク一族。少しずつエリーサベトを蝕んだ恐ろしい記憶が詳らかにされていく……

 

 

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「軋み」です(・∀・)

新たなアイスランド・ミステリ登場。人口30万にも満たない極北の島国からまた新たな傑作が登場しました。最近の小学館はアイスランド推しらしく、アイスランド好きな私には大変嬉しい。そうでなくても小学館は最近新作の海外ミステリ推しているので良きかな。

 

 

アイスランド・ミステリは翻訳されているものは全て読んでいると自負していますが今作は女性による女性警官が主人公。恋人ダーヴィスと何の予測も無く別れざるを得なくなり、計り知れない喪失を抱えて故郷に戻り、そこの警察に再就職しました。このダーヴィスとどうして別れたかは……ここではちょっと話せません。後で少し触れます。

 

 

観光名所だけどあまり人気のない灯台で女性の遺体が見つかって、事件つまり物語、つまり過去の紐解きは始まります。本書でも誰が彼女を殺したか? 彼女はどんな人でどんな人たちに囲まれていたのか?が重要になってきます。現在と交互に語られる過去の誰かの物語……そこに感じた違和感が少しずつ大きくなり、はっきりした形になる時、読者の心臓は冷たい手で鷲掴みされたように冷えていきます。もうはっきり言って大人にドン引きだ。はっきり言ってはっきり悪人、と呼べない善人というか普通の人の方が罪重く見える時ありますよね……勿論はっきり罪人にもドン引きです。そのまま死んで町の人に軽蔑されれば良かったのに。← っていうか関係者の未来はそれで良いのか。

 

 

アイスランド・ミステリを読んでいて思うのはレイキャビークが舞台でも、東部や北部のものすごい田舎が舞台でもものすごく閉鎖的、密に感じる、ということ。つまり町の住人同士全員が知り合いで内情はみーんな筒抜けでそれでも見て見ぬ振りしてしまう、または評判を鑑みて口をつぐんだり行動を辞めてしまう、ということが20世紀終わりはもちろんのこと、21世紀でも有りえるということ。それを如実に体現させるのは犯罪捜査部の責任者ヘルズル。なんつー閉鎖社会……自分は首都圏に住んでいるので尚更そんなこと考えられないです。はっきり言って吐き気ものです。一応舞台は2017年ですよ? 

 

 

主人公エルマは30代。レイキャビーク警察に勤めていただけ有って能力は高く心理学にも精通しています。同僚たちは皆、良い人たちで中でもサイヴァルとはパートナーみたいになっていきますが……ダーヴィスに関してはおそらくこうなんじゃないか、と思っていました。続刊があるようなのでそこでもう少し破局の過程も理由も語られると思います。翻訳が楽しみです。また楽しみなシリーズが増えました。

 

 

「軋み」でした(・∀・)/

3時間で無実を証明せよ!(*^o^*)/