ペーター・ホゥ No.1◇スミラの雪の感覚◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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可愛がっていた少年の死の裏には一体何が隠されている?

 

 

 

 

 

◇スミラの雪の感覚◇ -Miss Smilla's Feeling For Snow-

ペーター・ホゥ 染田屋茂 訳

 

 

雪のコペンハーゲン。イヌイットの血をひき、雪と氷と孤独を愛する女性、スミラ。友人の少年が雪の屋根から転落死する。が、雪が「読める」スミラに残された足跡は告げる、これは事故ではない―。真相を追う彼女にかかる検察の圧力。無言の脅し。そして、スミラが単身乗り込んだ謎の船は、氷に閉ざされたグリーンランドへ…。全く新しいヒロイン像が欧米で爆発的にヒットした、北欧産海洋冒険ミステリー。

 

 

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スミラが可愛がっていた少年イザイアが死んだ。

屋根から転落して。……捜査をした検事局や検死医は事故だと言うがスミラは納得しない。イザイアは高い場所を怖がったし、唯一雪に残っていた彼の足跡が「違う」と言っていた。スミラはグリーンランド人の血を引いていて氷と雪に精通していた。

 

 

スミラは独りでーーー非合法的な方法を使って捜査を開始する。そしてイザイアは死んだ直後に筋肉の生検を取られたこと、なんらかのグリーンランドからカセットテープを持ち出したことを知る。グリーンランドに派遣された地質学調査団のメンバーだったイザイアの父親の食中毒死とも関係があることも。

 

 

そのスミラを面白く思わないのか検事局のラウンは圧力をかける。イザイアを可愛がっていた機械工も加わり、スミラは屈しない。彼女の前に立ちはだかるのはもう1つの死体、そして巨大な謎の船「クロノス」号。それに乗ることになったスミラがその果てに目にしたものとはーーー

 

 

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「スミラの雪の感覚」です(・∀・)

 

 

これぞ! 海洋冒険ミステリー! に相応しいミステリーです。まさか北欧ミステリーでヴェルヌ顔負けの海洋冒険ものが読めるとは。しかし北欧5ヶ国のうち3カ国はスカンディナヴィア半島にあるし、アイスランドは島国だし、デンマークだって島々からなっている。海洋ミステリーものが生まれたってなんの不思議も無いわけだ。寧ろ今まで当たらなかった方が不思議だった?

 

 

寧ろ今回特異なのは主人公です。なんとグリーンランド、つまりイヌイット(グリーンランド風に言うなら「カラーリット」)の血を引いた孤高な女性です。北欧女性に女同士できゃっきゃっ笑う場面は全く想像つかないので孤高、はともかくとしてカラーリットの女性を主人公に置くとは。グリーンランドといえばそのカラーリットと白熊ととんでもなく寒いところ、という典型的なイメージしか無かったのですが、本書を読んで「そんなものが……!!」という感じでした。下手したらネタバレになってしまうのでそれしか言えない。というか船と氷と雪の知識が専門的過ぎてちんぷんかんぷん……自然科学が下手な横好きな自分には到底太刀打ち出来なかったです……あと描写が本当に寒々しくて読むだけで凍死しそう。

 

 

本書が刊行された1996年当時、スミラは全く新しいヒロインでした。2022年の今読んでも「スミラ、すげぇ」と思うので男性よりも男性的で、感情を極力持ち込まないがイザイアを思う時ふと垣間見せる人間性に惹かれた読者は多かったと思います。

 

 

また周囲の人間たち、というか男たちが複雑です。特に後半のクロノス号で関わる船員たちの関わり合いは殺伐、緊張感ばりばりです。少しずつ真実が明らかになり、隠された秘密も明らかになるにつれて「……お前、お前な〜。゚(゚´Д`゚)゚。」となりましたよええ……

 

 

「スミラの雪の感覚」でした(・∀・)/ 

演技が本当になる瞬間!?(*^o^*)/