かつてヤクザだった成り上がり者の死には城館強盗を行う兄弟と長年モンマルトルで密告していた男の影が……
◇メグレと匿名の密告者◇ -Maigret et L'indicateur-
ジョルジュ・シムノン 野中雁 訳
やくざ上がりのレストラン経営者マルシアの死体がジュノー大通りで発見された。大口径の拳銃で至近距離から一発撃たれている。ただし殺人現場は別の場所だと推定された。メグレはマルシア夫人に会うため、マルシアの自宅を訪ねる。やくざ上がりの男には不釣合いの見事な家具と美術品がメグレの目に止まった。未解決の城館ギャング強盗が頭にひらめいた。翌朝、マルシア殺しの犯人はやくざのモリ兄弟だという電話。密告者は自分の身が危うと言いながら、身許も告げずに電話を切った。メグレはモリ兄弟、マルシア未亡人に的をしぼって捜査を開始する……。
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夜、眠っていたところを叩き起こされたメグレ。というのも殺されたのが《ラ・サルディーヌ》の経営者のマルシアだったからだ。彼は昔はやくざだったが、立派に成功していた……
そしてマルシアの死体そのものも不可解だった。彼は拳銃を持っていたが、これで殺された訳ではない。そもそもジュノー大通りではなく、別の場所で殺され、捨てられた可能性が高いのだ。それならば彼は一体どこへ居たのか?
メグレはマルシアの行動を洗うためにまずレストラン、次に彼の自宅に足を運ぶ。自宅でメグレを迎えたのはマルシア夫人。若くて美しく、見事な家具と美術品に囲まれている。やくざもののマルシアにしては価値が分かっている。彼が選んだのだろうか……? 折しもパリでは城館ギャング強盗が相次いでいたが……
翌日、彼のところに18区のルイ刑事が尋ねてくる。彼は18区を絶えず歩き回り、その界隈に住む人間の全てを把握し、彼らもルイを知っている。さて、ルイ刑事は何年も前から匿名の密告の電話を受けていたが、昨日の夜も受け取ったのだ。「マルシア殺しはモリ兄弟の1人だ」モリ兄弟は若い美男子ながら犯罪にも手を染めていると噂されている。そして……その匿名の密告者は「自分の身も危うい」と言ったのだ……
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「メグレと匿名の密告者」です(・∀・)
シムノンもどんどん読破達成に近づいています。最初は雰囲気に慣れず辛かったけど今はなんか寂しい……
本書は他の作品でも時々登場する名乗らない密告者がキーパーソンになっています。なぜそんな事実を知っているのか、なぜ名前を名乗れないか、もさることながらなぜ密告するのか、なぜ「匿名の密告者」に甘んじるのか、まで追究するところがシムノンっぽい。
……でも容疑者といい、犯人像といい、会話といい、前にもこんなのあったな〜と既視感が否めない……解説にもあったけどもうシムノンも限界だったのか……でもクリスティーは晩年にだって傑作を書いたぞ! 「終わりなき夜に生れつく」は雰囲気も良いし、後期の最高傑作だと思ってる!
「メグレと匿名の密告者」でした(・∀・)/
次は〜……2作目も期待するよ? 期待しちゃうよ!?(*^o^*)/