戦後を生き抜き、2人の盟友を見送って何を思うかーーー
◇不良少年とキリスト◇
坂口安吾
1948年6月13日、太宰治が情死する。逸早く知らせを受けた安吾は、その死に何を見たか。太宰論から文明論に到る圧巻の「不良少年とキリスト」。もうひとりの文学的盟友、織田作之助の喪われた才能を惜しむ「大阪の反逆」。戦後の日本に衝撃を与えた「堕落論」で時代の寵児となった著者絶頂期の、色褪せることのない評論 9 編。二つの「無頼派座談会」と文庫初となる掌篇小説「復員」を特別収録。
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1.復員
2.恋愛論
3.欲望についてーープレヴォとラクロ
4.二合五勺に関する愛国的考察
5.詐欺の性格
6.ヤミ論語
7.敬語論
8.呉清源論
9.座談会 現代小説を語る
坂口安吾・太宰治・織田作之助・平野謙
10.座談会 歓楽極まりて哀情多し
太宰治・坂口安吾・織田作之助
11.大阪の反逆ーー織田作之助の死
12.不良少年とキリスト【追悼 太宰治】
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「(中略)ところで今日お二人がこの店に居るのは、何かの会合ですか?」
「どうだっけ、織田作?」
「いや」私は太宰の代わりに答えた。「何の予定でもない。偶然ここに来たら太宰が居ただけだ」そういう事はよくあるのだが。
「そう? 私は今夜ここに来たら君達二人に会えるような気がしてね。なんとなく来た」太宰はそう云って、自分の発言をして面白がるように微笑した。
「僕達に用事があったのですか?」
「別にないよ。ただ、そうしたらいつもの夜になるかな、と思っただけさ。それだけ」そう云って太宰はグラスを爪で弾いた。
ーーー「文豪ストレイドッグス 太宰治と黒の時代」より。
ポートマフィア幹部太宰治の密かな習慣はバー「ルパン」に足を運び、運良く出会えた織田作と安吾と語り合うこと。その日々はあまりにも少なく短くその上悲しい別れで終わってしまいますが、3人と笑い語らったあの日は太宰さんの中で幸せな思い出の1つとしていつまでも心に優しく残っている……だと思いたい← 21巻も絶賛殺伐しています。大丈夫かいおい😱
実在の太宰治らもバー「ルパン」で語らいました。それも文学談話。すごい言いたい放題です← 言っていること破天荒でもあるのですが何故だろうすごく悲しいものがあるなぁ……副題は正しかった。おちゃらけることで哀情をひた隠しにしている感ある。
ちなみに座談会、というのを初めて形にしたのは菊池寛(1888〜1948)だそうです。バー「ルパン」の創業にも資金を出しているし、もし「文スト」に登場するなら一時代前の裏世界の大物かも知れない←
坂口安吾は1906年生まれなので太宰治(1909〜1948)と織田作之助(1913〜1946)よりも年長です。しかし若い2人を見送る立場になってしまいました。こういうの、本当だめ(T ^ T) 安吾は2人を追悼するように2つの評論を書きました。織田作之助には「大阪の反逆」、太宰治には傑作と名高い「不良少年とキリスト」です。
「文豪ストレイドッグス」17巻より。織田作の墓参りに来たら既に太宰さんからの花束が……うう、辛い……安吾は秘密裏に死んだ構成員の人生録を作っていました。どんな気持ちで織田作の人生録を作ったのか、と思うと泣けてきます……友達だったのに安吾の立場がそれを許しませんでした。
「大阪の反逆」は一読すると「哀悼とか本当に考えているんだろうか」と勘ぐってしまうような内容ですが←「織田は悲しい男だった」にものすごく哀悼の意を感じます。生きている時にも感じたかもしれませんが、過去形というのがな……
「不良少年とキリスト」は結構有名なので読んだことのない私でも「この分、知ってる!」となりました。「太宰は、人間に失格しては、いない」とか! ……このままいくと太宰さんも作品中で死ぬのかなぁ……日本近代文学史で有名かつ衝撃を与えた死の1人だもんなぁ……と考えるとやはりあの芥川の死は必然だったのか……敦くんはもとより安吾のメンタルもやられるわぁ……と思ったけどきっと泣いたりはしないんだろうな。史実の坂口安吾がきっと泣かなかったように、ただそのコメディアン的な道化を哀しく懐かしんだように。
「堕落論」を読んでいても思いましたが、坂口安吾は鋭いですね。ぐさっ、と権勢の痛いところを突く。本書を読みながらどうして安吾が史実とは真逆な硬っ苦しい政府の役人になったのか分かった気がします。国をどうにかしないと、と考えたらその中枢に入って内部から変えていくのが1番効果的ですよね。
「不良少年とキリスト」でした(・∀・)/
次はどんどん読破達成に近づくメグレ警視です(*^o^*)/