言葉が揺らぐ時、世界も揺らぎ、私とあなたの間も揺らいで行くーーー
◇穴あきエフの初恋祭り◇
多和田葉子
近づいたかと思えば遠ざかり、遠ざかると近づきたくなる、意識した瞬間にするりと逃げてしまうもの――。
十年ぶりに再訪したはずの日本(「胡蝶、カリフォルニアに舞う」)、重ねたはずの手紙のやりとり(「文通」)、何千何万年も共存してきたはずの寄生虫(「鼻の虫」)、交換不可能な私とあなた(「ミス転換の不思議な赤」)。
ドイツと日本の間で国と言語の境界を行き来しながら物語を紡ぎ、『献灯使』で全米図書賞(翻訳部門賞)を受賞するなど、ますます国際的な注目が集まる言語派作家・多和田葉子さん。「移動を続けること」が創作の原動力と語る著者が、加速する時代の速度に飲み込まれるように、抗うように生まれた想像力が鮮烈なイメージを残す7つの短篇集。
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1.胡蝶、カリフォルニアに舞う
2.文通
3.鼻の虫
4.ミス転換の不思議な赤
5.穴あきエフの初恋祭り
6.てんてんはんそく
7.おと・どけ・もの
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「穴あきエフの初恋祭り」です(・∀・)
約2ヶ月ぶりの多和田葉子です。本書は短く薄い短編集で7作収録されています。
彼女にしか書けない言葉の変換から生まれる独特の世界観が「加速し、止まることのない今日の世界に否応無く呑み込まれることに抵抗する」を体現します。
特に6の擬人化した電話会社に対し、「古い電話番号で良い」と怒る場面や7の届く郵便物に振り回される場面は印象的です。
今回彼女の小説を読んで超現実主義のルネ・マグリットを思い出しました。彼は「あり得ないこと」を絵や言葉で表そうと、ものとイメージには様々な関係があり得ると説きました。彼女の作品の言葉たちも変換し、揺らぐことで様々なものや関係に変化します……その揺らぎの世界に私たちは魅了されます。言葉の冒険……これぞ小説の醍醐味!
「穴あきエフの初恋祭り」でした(・∀・)/
次はものが燃える温度って……?(*^o^*)/