農奴解放令が出されたロシア。人々の世界は揺れ、ある事件の前哨が聞こえる……
◇悪霊・上◇ -Бесы-
フョードル・ドストエフスキー 江川卓 訳
1861年の農奴解放令によっていっさいの旧価値が崩壊し、動揺と混乱を深める過渡期ロシア。青年たちは、無政府主義や無神論に走り秘密結社を組織してロシア社会の転覆を企てる。――聖書に、悪霊に憑かれた豚の群れが湖に飛び込んで溺死するという記述があるが、本書は、無神論的革命思想を悪霊に見たて、それに憑かれた人々とその破滅を、実在の事件をもとに描いた歴史的大長編である。
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「文豪ストレイドッグス制覇計画」3巻編最終巻はまたもドストエフスキーです←
まさかこんなに読む羽目になるとは……orz この人の作品を読むといつも25mプールをぶっ通しで泳がされる気分になります……
そんなわけで台詞にも有る「悪霊」です。本書は1861年の農奴解放令を発端に起こった1869年の「ネチャーエフ事件」をモデルに書いた革命蜂起を企てた、それに巻き込まれた、その巻き添えを食らった若者たちの破滅の記録です。そのネチャーエフから出来たピョートル・ヴェルハーヴェンスキーと彼に祭り上げられつつある美青年ニコライ・スタヴローギンの、若者らしい無分別な行動と密やかな企みとがドストエフスキー流の濃密な人間観察の眼で描かれています。
上巻はピョートルとニコライよりもそれぞれの父親、母親のステパン氏とワルワーラ夫人の方が出番が多いのですが、上巻のしっちゃかめっちゃかの根源はこの2人にあると考えて良し。
読んでてつくづくドストエフスキーは「この人、哲学者にでもなれる」と思いながら読みましたが、哲学者はもっと人間を信じているよなぁ……とも思ったり。ドストエフスキーはある意味人間にも神にも絶望してそれでも2者から新しいものを見出そうとしている点でやはり「文スト」ドストエフスキー像はあれで然るべき存在なんだなと思ったり。
そんなわけで下巻、破滅と血生臭い匂いしかしませんが、頑張って泳ぎ切る気持ちで読みます← (*^o^*)/