レックス・スタウト No.5◇手袋の中の手◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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例え侮られ、軽んじられても女探偵の元祖は挫けない!

 

 

 

 

◇手袋の中の手◇ -The Hand in the Glove-

レックス・スタウト 矢沢聖子 訳

 

 

若き女性探偵ドル・ボナーに依頼を持ちこんだのは、共同経営者シルヴィアの後見人P・L・ストーズだった。彼の妻に巧みに取り入って金を引き出している宗教家の身辺を探り、尻尾をつかまえてほしいと言うのだ。さっそく郊外のカントリー・ハウスへ乗りこんだドルだが、そこで待っていたのは、依頼人P・Lの無惨な死体だった。しかも、状況から見て、邸内に滞在する人物の犯行に間違いない。女と見て小馬鹿にする地元警察を向こうに回して、ドルの頭脳が回転し始める…ネロ・ウルフ・シリーズの巨匠が生み出した女性探偵ドル・ボナーの活躍。

 

 

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ドル・ドナーは友人のシルヴィア・ラフレーと共同経営で探偵事務所を営む女探偵。しかしシルヴィアの叔父で後見人のP・L・ストーズはこれを良く思わず、手を引けと宣う。シルヴィアは憤慨するが叔父のことは敬愛している。ドルはそれを知っているからこそ探偵事務所を閉めることを決める。

 

そこに当のP・Lがやって来る。彼はシルヴィアが探偵事務所の経営をしていることが嫌なのであってドル個人の能力は買っていてその能力を自身の依頼の為に使って欲しいと来たのだ。彼の妻がランスなる宗教家に入れ込んで多額の金を引き出している、あまつさえ娘のジャネットをランスと結婚させようとしている、なんとか弱みを握って欲しいとの依頼だ。ドルは探偵事務所存続の為に引き受ける。

 

 

そのランスらはストーズ家の別荘バーチヘイヴンに居るという。そしてシルヴィアや知人のマーティン、スティーヴも元新聞記者のレンもいる。ストーズ夫人もジャネットもいる。全員いる。その中でP・Lはワイヤーで吊り上げられて殺された……

 

 

ワイヤーで首を吊り上げるのは並大抵の技では無い、手を傷つける。手に傷のある容疑者はいないから手袋をしていたことになる。その手袋はどこにある? 地元警察はドルを女と馬鹿にするので協力は当てにならない。単独で捜査を開始する。ドルは思いがけない場所から手袋を発見し、いくつかの事実と嘘を手に入れてしまう……

 

 

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「手袋の中の手」です(・∀・)

随分久しぶりのレックス・スタウトだったのですが、まさかの7月、1冊も読んでいないことに戦慄致しました← 2回ワクチン接種が完了したこれからは8月以降は通常の読書の輪に戻ると思います。

 

 

そんなわけで本書は初のノン・ネロ・ウルフシリーズです。しかも世界初の若い女性探偵!「えっ、今までいなかったの!?」って感じですが、某少年探偵漫画に登場するもう1人のヒロインの名前の由来になったコーデリア・グレイとV.Iの誕生は1972年と1982年です。

かといって女性探偵が今まで居なかったわけではなく、1928年にパトリシア・ウェントワース(1870-1961)によるミス・シルヴァーが誕生します。ですが彼女はミス・マープル系のおばあちゃん探偵です。本書の主人公ドルは1937年なので、若い女性探偵の誕生は今考えると信じられないほど遅かったのです。

 

 

ドルは決して不細工では無いのですが男嫌いです。さぁ自立するぜ、よし探偵事務所を開こう!と考える人が男の庇護なんて必要とするわけありませんよね。しかし自分も女なので分かりますが感情的にものを考えるところがやはり有ります。地元警察のシャーウッドや『北風』大佐ブリッセンデンに歯向かうところは自分でも歯向かうわと思うので良いのですが←、人間的感情で動いて、後々自分の行動を悔いるところがまぁ、男性探偵ならしないよな……と思ってしまう← ごめん、ドル……「探偵は女に向かない職業」と言うのは亡きP・D・ジェイムズですが、女が探偵をやったって勿論良いと思うのです。男には男の着眼点があるように、女には女の着眼点があるのだから。

 

 

本書はアリバイ崩しの作品なのでアリバイ崩しが苦手な自分は整理するのが大変でしたが、手袋の隠し場所が流石だと思いました。いくら日本よりも湿度の低いアメリカだとはいえ、こんなところ探したく無いよね。でも良い隠し場所ですよね。中身を見ずに処分してくれるんだから。ちょっとダール氏と似たところある?

 

 

「手袋の中の手」でした(・∀・)/ 

次は「文豪ストレイドッグス制覇計画」3巻編最終作! いつのまにかこの人の作品を沢山読む羽目に…… (・∀・)/