クルト・ブラハルツ◇カルトの影◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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行方不明の娘が入信したカルト団体でアードリアンが発見したものとは……

 
 

 
◇カルトの影◇ -Pappkameraden-
クルト・ブラハルツ 郷正文 訳
 
 
行方不明となった資産家の娘の捜索を依頼されたしがない興信所員アードリアンは、調査を進めるうち、あるセックス・カルトの存在に行き当たる。グルの言葉に導かれ行き着く先には…。
 
 
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アードリアンはちびで、でぶでワインが好きな〈WMA〉興信所の所員だ。ある日資産家キュンツルの秘書というモースブルガーという男が主人キュンツルの娘カタリーナを探して欲しいと依頼して来る。意図的自傷症候群(DSH)の持ち主である彼女はあるカルトに入った。その居場所をインド人の男が知っている、その男を探して欲しいというものだ。手がかりは彼が残したココナツが1個ある表紙のついた本。
 
 
本屋に立ち寄ってその本を調べるとココナツ本はタントラというセックス・カルトのパンフレットだった。先日アードリアンが立ち寄ったワイン専門酒場で出会って関係を持った女の子クラウディアの部屋にも同じ絵があった。アードリアンはキュンツルの娘を探すのとタントラというものが何なのかを探るために興味を持ち、踏み込むがーーー
 
 
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「カルトの影」です(・∀・)
 
 
名前の通り全世界で他人事では無いカルト宗教に迫ります。と言ってもグル(インドの言葉で指導者、導師のこと)曰く「タントラ宗教ではなくて、儀式と礼拝が融合したものであり、それを実践する者を解脱へと導く。(中略)その解脱への道は官能的悦楽と喜びの極地を極めることであり、禁欲生活の完全な拒否である。官能は解脱の門であって、特に性欲はタントラの活動のもっとも重要な手段である」と説いています。といってもそういう信条に一定数の肯定者が居ればもうそれは宗教なんじゃ無いだろうか。言ってみると説教風でカッコいいですが、聞く分だととことんゲスいですね?
 
 
主人公アードリアンはそんなカルト宗教に飛び込みます。探偵の捜査以外にも「したくても出来ない」という自身の問題をこのタントラで解決しようと試みる特異な点があります。この時点で本書はミステリーであると同時に作者の後書きにもあるようにサブカルチャー文学なのです。私は純文学は死んだとはあまり思いませんが(私が一時読んでいた平野啓一郎は大衆小説を書きたくても大衆小説になりきれないほどに純文学作家だと思っています)、サブカルチャー文学にも文学の可能性が有ると思います。
 
 
「カルトの影」でした(・∀・)/
次は……1冊の本がキテレツな出来事に導く!?(*^o^*)/