マルティン・アマウスハウザー◇病んだハイエナの胃のなかで◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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1冊の本が主人公をウィーンの"裏側"へと導く……

 
 

 
◇病んだハイエナの胃のなかで◇ -Im Magen Einer Kranken Hyäne-
マルティン・アマウスハウザー 須藤正美 訳
 
 
ヘンテコ都市伝説。ウィーンの地下鉄で偶然、1冊のミステリーを手にしたのが運のつき。23区を順番に巡る先々で出没するキテレツな人たち、素っ頓狂な出来事、忍び寄る魔の手。
 
 
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1.ハイエナのげっぷ
 ……インネレ・シュタット区。主人公が地下鉄ヘレン小路駅に悪態をつき、ハムの臭いの染みついた謎の書物を見つける。
 
 
主人公はカルメリーター界隈に赴き、時計職人を捜す男に出会う。
 
 
2.シベットという名の分泌液
 ……レーオポルトシュタット区。これまでの経緯。地下鉄三号線で太った男のズボンのポケットから一冊のミステリーがすべり落ちた。それゆえ第二話では大豆ソース(醤油)が扱われる。
 
 
他殺の可能性もあるイヌの自殺について。それからニキ・ラウダと帝国橋がそれといかなる関係にあるのか。
 
 
3.ペット殺しと贖罪
 ……ラントシュトラーセ区。第三話は人間の遺体と動物の死骸の搬送、ならびにニキ・ラウダの救急搬送について。
 
 
主人公が足の拇指球に疼痛を感じて、かかりつけの皮膚科、整骨科、耳鼻科を兼ねる医院に行く。
 
 
4.内反足の腸炎
 ……ヴィーデン区。四区では一人のアナーキストが古紙回収用コンテナーの陰に潜む。主人公は刺し殺されるのではないかと怖れ、二頭の犬が撃ち殺される。
 
 
とびきり元気な蟻の団体観光客に伴われて主人公は地下十九号室に赴く。
 
 
5.地下十九号室
 ……マルガレーテン区。主人公は外人の傍若無人ぶりを嘆く。彼らが隣の部屋でグリルパーティーを開いて大騒ぎをするので。
 
 
ゼンメルパンオイル塗り機を捜す旅は水族館で終わる。
 
 
6.ゼンメルパンオイル塗り機
 ……マリアヒルフ区。第六話には白痴の頭の中のように黄色っぽいヴェールがかかっている。主人公はできることならハコフグとともに旅立ちたいと思う。
 
 
13A路線バスが渋滞し、ある愛の物語が始まる。
 
 
7.愛と月光
 ……ノイバウ区。イトマキエイのショーとサメのショーが、性的な交わりと観光客同士の交流の間に横たわる根本的な違いを明らかにする。
 
 
主人公は自分こそがパネギューリカーなのではないかという疑念にとらわれる。
 
 
8.僕は恐るべき発見物
 ……ヨーゼフシュタット区。第八話で、主人公は自分の身体を地域暖房センターに献体登録していたことを知る。さらに首相をヴラニツキーが自らの身体を傷つける。
 
 
祖母たちが雌のヘラジカに変身し、さらに主人公の中のスウェーデン人気質が明るみに出る。
 
 
9.超満員の七つのハッペル・スタジアム
 ……アルザーグルント区。第九話で主人公は舌の先端部を失い、仕方なくそれをカモメたちにくれてやる。そして一羽のハトが大学に聴講届けを出す。
 
 
制服を着たホモの警官たちがやって来てファヴォリーテン区を恐怖のどん底に陥れる。
 
 
10.下半身の奥深く
  ……ファヴォリーテン区。主人公は第十章で検閲に理解を示す。それから彼がおかまを掘られた経緯と、それが彼には痛くも痒くもなかった理由。
 
 
厚顔無恥なビラ・シンジケートに関する真実のすべて。
 
 
11.ウズラ卵が育つところ
  ……ジンメリング区。前回の出来事。かなりイケてた女友達が轢かれてぺちゃんこになり、主人公が彼女のはらわたを片付ける。
 
 
マルクス・マイトリンガーをめぐるいざこざ、ならびにマイトリンガー製サポートソックスとの関係。
 
 
12.一九〇四年のオレンジ色の炎
  ……マイトリング区。第十二話ではヘリウム気球が炎上し、読者は主人公に残された最後の弾丸が誰の肩に命中したかを知る。
 
 
なにゆえ主人公はモモヒキのプレゼントを敬遠するのか。どうして誰も彼も彼の気持ちを無視するのか。
 
 
13.モモヒキプレゼントへの条件反射
  ……ヒーツィング区。前回のあらすじ。主人公は間違えて恋人のアナを撃ってしまう。そのために二人の不運なタイムトラベラーは一九〇四年に留まる。
 
 
ブライテンゼー街区出身のシュルリ叔父について知っておくべきこと。彼はヨーコ・オノ食器セットを持っている!
 
 
14.48Aで眠るなかれ
  ……ペンツィング区。第十四話では、全自動オゾン空気清浄機をめぐる大論争。ならびに我が一族に共通するお尻の形とそっくりな尻をもつ馬について。
 
 
ルードルフスハイム街区とフュンフハウス街区の間の境界線。そして主人公の手にパックリと開いた傷口。
 
 
15.ハンモックの中の洟
  ……ルードルフスハイム=フュンフハウス区。ある理論を検証するために主人公はヨーン通りにでかける。そこで彼はうっかり怪我をするが、かろうじて死は免れる。
 
 
鼻を苦しめる恐るべき悪臭。銘菓マンナーシュニッテンの悪臭と「ゴルドファッスル」の醸造所から立ち昇る腐敗臭。
 
 
16.九十名のセックスツアー客放屁す
  ……オッタクリング区。十六話ではシュルリ叔父が精神病院から遁走する。不運にも主人公はガスマスクをつけたまま誘拐されてしまう。
 
 
ヘルナルスのキリスト教社会はライス添え肉料理の復活を信じる。
 
 
17.キリストの芝刈り機
  ……ヘルナルス区。前回、主人公は網で捕獲され、失神してビル管理人の車で運び去られた。
 
 
ハトは空飛ぶ「ネズミの餌」にすぎないのか?
ハトに餌を与える者は、結局にネズミに餌を与えることになる。
 
 
18.イーダとデジレーと僕
  ……ヴェーリング区。第十八話で主人公は乳頭の痛みとビーチ・シュプリッツァーに悩まされる。一方彼の内面では共鳴体がブギウギを踊る。
 
 
重病患者のお尻のテクニック、あるいは画家が建築家になる場合。
 
 
19.ゴミで出来たモスク
  ……デープリング区。地平線の彼方、這いつくばるように横たわるカール・マルクス・ホーフについて、それと「四十分」という返事が少女に満ち足りた笑みを誘ったこと。
 
 
ルートヴィヒ・ヒルシュのような声で歌う、ブリギッテナウの掃除機。
 
 
20.学生専用電灯〈バルーン〉の中の両生類
  ……ブリギッテナウ区。第二十話ではパゼッティ通りの秘密が明らかになり、主人公は、犯罪的といってもいいほどの成功を収めた発明家たちを誹謗する。
 
 
世界革命勃発の暁月に僕らはどのフローリッツドルフ小路を名称変更すべきか。
 
 
21.コンゴへの最終便
  ……フローリッツドルフ区。コンゴの秘密諜報員がダグ・ハマーシェルトをザンビア上空から墜落させ、主人公はアナと出会い頭にぶつかる。
 
 
「ファック・モック」と「リック・ディッツ」食えないプラカード。
 
 
22.古ドナウ河、奔流す
  ……ドーナウシュタット区。第二十二話ではペダル・ボートが失踪、学生たちが自動車狂ぶりを発揮して、ゲンゼホイフェル・プールが首をすくめる。
 
 
二十四区の輪郭が浮かび上がる。
 
 
23.ある鼻における殺人
  ……リージング区。最終回で読者に知らされるのは、歯磨きペーストが何に役立つかということ。それから生きとし生ける者、みな血腥いミステリーの結末を知らないということ。
 
 
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「病んだハイエナの胃のなかで」です(・∀・)
 
 
この「ミステリー」は「推理小説のミステリー」では無く、「神秘怪奇のミステリー」です。主人公マルティン・Aが『二十三区の血腥いミステリー』の主人公、パネギューリカーを求めて、逆に追いかけられて上記の奇天烈、摩訶不思議、怪奇幻想のウィーンを彷徨います。イラストがついていて、なんか諸星大二郎チックなタッチです。書いた人はドクトル・シャンペという匿名画家なのですが、なんか似てる……作品的にも諸星大二郎が書いていそう← 意思を持つオゾン空気清浄機、時間旅行……なんとも言い様の無い不可解さ……全てが紛い物、それもふざけたものに見えます。
 
 
ウィーンの区は二十三区ありますが、その二十三区全てを歩き回ります。ホーフブルクやシェーンブルン宮殿やカフェ巡りに飽きたウィーン通の人たちは本書を読んで"裏"ウィーン案内も悪く無いかも!?
 
 
「病んだハイエナの胃のなかで」でした(・∀・)/
次はウィーンの女流作家が大集合!(*^o^*)/