ジェイムズ・トンプソン No.2◇凍氷◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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ロシア人富豪妻殺しとフィンランドの戦争犯罪捜査ーーーフィンランドの今昔を行き来するカリ!

 
 

 
◇凍氷◇ -Lucifer's Tear-
ジェイムズ・トンプソン 高里ひろ 訳
 
 
フィンランドはユダヤ人虐殺に加担したか―歴史の極秘調査ともみ消しの指令を受けたカリ・ヴァーラ警部。ヘルシンキで起きたロシア人富豪妻の拷問死事件の捜査においても警察上層部から圧力がかかる。さらにカリを襲うのは原因不明の頭痛。妻のケイトは彼を心配するが、臨月を迎えた妻をこれ以上不安にさせることはできない…。激痛に耐えながら挑んだその結末とは?好評極寒ミステリ第2弾!
 
 
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あの事件から1年。カリは妻のケイト共にヘルシンキに引っ越し、そこの殺人捜査課に入った。しかし環境の激変だけでなく、カリとケイトも変わった。双子は流産してしまった。今は新しい命が芽生えているが、ケイトは先の罪悪感を抱えている。そしてカリは頭痛に悩まされている。先の事件によって心因的にも悩まされるカリは神経的にも悩まされることに……
 
 
故郷のラップランドの寒さが恋しいカリは国家警察長官のユリから歴史犯罪の捜査と揉み消しを依頼されるーーー第二次世界大戦中のフィンランドは国内の収容所で共産主義者とユダヤ人捕虜の大量処刑を行い、ドイツは容疑者引き渡しを要求している。ところが問題のアルヴィドはフィンランドの英雄だ。そうなるとフィンランド人の反感は免れない、というわけだ。
 
 
ロシア人富豪フィリポフの妻イーサが殺された事件をミロという巡査部長と手掛けることになる。発見された時現場にはイーサの愛人が倒れており、二人は長年不倫関係でアブノーマルな性的嗜好を持っていたことが分かる。しかしこの捜査を続けるうちに夫が有力者であることから早期解決を求められて、重圧をかけられる。
 
 
原因不明の頭痛に文化が全然違うケイトの弟妹のフィンランド訪問と気の休む暇の無いカリは次第にその戦争犯罪に加担したと思しきアルヴィド夫妻の語らいに居心地の良さを感じるが、話せば話すほどアルヴィドが虐殺に加担していた事実は浮き彫りになるし、事件はますます混迷するしでカリの心痛はどんどん大きくなるーーー……
 
 
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「凍氷」です(・∀・)
 
 
「極夜」に続いてフィンランド・ミステリ&カリ・ヴァーラ警部シリーズ第2巻。打って変わって都会のヘルシンキが舞台です。やはり都会でないとシリーズものはやり辛い? 夫妻がヘルシンキに引っ越すことは終盤から予想がついていましたが、4人で引っ越したんじゃなかったのか!?orz じゃあ1巻終わりのメリークリスマスはなんだったんだ! トンプソン氏、読者に対しても残酷すぎる……!
 
 
しかしまた新しい命が芽生えています。どうやら女の子の模様。その為にアメリカから弟妹ジョンとメアリがやって来ますが、2人は2人で色々問題を抱えている様子……しかしケイトだってまだ子どもだったんだからあまり責めないで欲しいです……フィンランドとアメリカは文化的に全然違うので相違については事細かに書かれています。それもトンプソン氏ならではの強みなのかも。日本の私たちから見ても全然違くて興味深い。しかし洗礼式までの数週間、名付けないならその間新生児をどう呼ぶんだろうか……「私の愛しい子」とか? 
 
 
本書は現代の殺人事件と過去の戦争犯罪の捜査が主軸になっています。前車に対しては前回同様アブノーマルな性的趣味にドン引きする他無いんですが、だって2作続けてこれとは……フィンランド人はそういうのが好きなんだろうか……いや違うよね!?
俄然興味があるのは後者です。フィンランドにそんなイメージはかけらも無かったので意外でした……フィンランド、ロシア、ドイツの関係はかなり微妙でカリの祖父母世代はドイツ人、ロシア人嫌いだと書かれていましたが、それを公言できるってすごいことなのでは……と思ったり。日本じゃ叩かれる← 逆にこれ、フィンランド人だったら書けなかったではないだろうかと思ったり。アメリカ生まれのトンプソン氏が一歩引いて客観的にフィンランドの歴史とかを調べまくった結果だと思います。本書をきっかけに北欧史を勉強するのもありだな。
 
 
ヘルシンキの寒さなんぞ屁でもないカリはまさかの衝撃のラストを迎えることに。せっかくハッピーエンドに終わった! と思ったのにそれは無い! 3巻を読むのめちゃくちゃ怖いんですけど!? 間に何か挟まないと私のメンタルが崩壊する!←
 
 
そんなわけで次は詩を読みます(*^o^*)/