ジェイムズ・トンプソン No.1◇極夜-カーモス-◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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夜の暗闇に真っ赤な血が撒かれる時、もっと暗い闇が炙り出される!

 
 

 
◇極夜-カーモス-◇ -Snow Angels-
ジェイムズ・トンプソン 高里ひろ 訳
 
 
フィンランド郊外の村の雪原に横たわる惨殺死体。被害者はソマリア移民の映画女優で、遺体には人種差別を思わせる言葉が刻まれていた。容疑者として浮上したのは、捜査の指揮をとるカリ・ヴァーラ警部から妻を奪った男。捜査に私情を挟んでいると周囲に揶揄されながらも真相を追うカリだったが、やがて第二、第三の殺人が起きてしまう。暗闇と極寒の地を舞台に描く、フィンランド発ノワール・ミステリー。エドガー賞、アンソニー賞、ストランド・マガジン批評家賞ノミネート作。
 
 
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北極圏に位置するフィンランド北部。冬は太陽が昇らない極夜が支配する。そのキッティラ署長カリ・ヴァーラの家近所にあるトナカイ牧場の近くで惨殺死体が見つかった。死体がはソマリア人女優のスーフィア・エルミで性的にも人種的にも酷い侮辱が込められていた。
 
 
人種的な差別か? フィンランドは外国人差別が顕著だがまさか……捜査の結果、スーフィアは「誰か」の愛人であることが分かり、その「誰か」はセッポ・エルミ。ヘルシンキの富豪でなんとカリの前妻カリの内縁の夫だった。ただでさえ家近所が事件現場なのに容疑者までカリの私生活と関係しているなんて! カリは上司で国家警察長官のユリに釘を刺されながらも捜査を始める。
 
 
捜査の最中、なんとカリの部下ヴァルテリの息子ヘイッキが首吊り自殺をしてしまう。ヴァルテリの宗派は自殺者には一切の救済無く、地獄行きだ。一体何があったのか? カリはパソコンとスーフィアの顔に落ちていた涙からヘイッキが殺人に関与していたことを突き止める。カリの隣近所の人間たちが殺し殺されながら掴んだあまりにも残酷な真相とは? 
 
 
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「極夜-カーモス-」です(・∀・)
 
 
遂にフィンランド・ミステリ編の始まり始まり〜。本ブログは今日、北欧の中では文化的にもスカンディナビア圏やアイスランドとは全然違う不思議な存在、フィンランドをお出迎えしました。フィンランド・ミステリはアイスランドと同じように言語的な問題で翻訳が非常に難しく、作品数も少ないのですがそれでもしばらくお付き合いしますのでよろしくお願いします。
 
 
フィンランドと言って思いつくものは? ムーミン、サンタクロース、高い教育水準、シベリウス、オーロラ、カレワラ……うん、悪いイメージはありませんでした。ある訳無ぇ。……が、この作品はフィンランド社会の闇という闇を徹底的に掘り下げてくれました。ああ、北欧ミステリは今日も良いことしか無い幻想をぶっ壊して現実を直視させてくれる……そうか、きっとヘルシンキしか見たことなかったんだろうな……本書の舞台はヘルシンキでは無く、北部の恐らく夏は白夜、夜は極夜の極端な環境。しかも極寒。いやー……アメリカ人ケイトじゃ無くても外国人は大変だよ……作者のトンプソンは名前の通りアメリカ人でケイトと逆でフィンランド人の奥さんとヘルシンキで暮らしています。ケイトが感じるフィンランドに対する違和感や疎外感は全部トンプソンの気持ちなんだろうなぁ……
 
 
本書は人種差別、猟奇殺人のてんこ盛りです。これでもか! というぐらい残酷さを書いているので結構気分悪くなります……北欧ミステリの第1作目が「湿地」じゃなくてこれでも死んでたな……スーフィアが弄ばれるところがもう最悪……そしてその元凶たるあいつにもあいつにも吐き気ものです……ヘイッキ可哀想過ぎる!!
 
 
主人公カリは結婚破滅からの再生型の一匹狼タイプ。家族関係にも幼い妹スヴィのことで暗いものを抱えていましたが、今回近所で事件で起こったことはある意味新たな1歩を踏み出させてくれました。どうかこの幸せがいつまでも続きますように……
 
 
そんなわけで次もカリ・ヴァーラ警部もの! 欧米なら何処も抱える歴史問題に踏み込みます!(*^o^*)/