邪恋を憚らないプロシア人の恐るべき秘密と恐ろしくも狂おしい悲恋!
◇ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密◇ -Le Secret de Wilhelm Storitz-
ジュール・ヴェルヌ 新島進 訳 石橋正孝 解説
H・G・ウェルズ「透明人間」の向こうを張ってヴェルヌが書いた透明人間もの。本作は息子のミシェル・ヴェルヌが書き換えた版(未訳)が長く読まれてきたが、今回がジュール・ヴェルヌのオリジナル版本邦初訳となる。唖然呆然の最終章のみ、ミシェル・ヴェルヌ版を併録した。
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フランス人アンリ・ヴィダルの弟マルクはハンガリーでは名の通った画家で名家のお嬢様ミラとの婚約が決まった。5つ下の弟と久しぶりに会うことと義理の家族との対面が楽しみだった。
ところが、懸念すべき点が1つあった。実はミラにはマルクより前に求婚者があった。その名はヴィルヘルム・シュトーリッツ。ヴィルヘルムの父親オットーはドイツでは名の通った科学者だったが、魔法使いとも言われた怪しげな男だった。しかもミラの実家はこの求婚を退けたが、シュトーリッツは諦める様子がなく……とはいえ、マルクからの手紙にはそんなことは書いていなかった。きっと解決したのだろうとアンリは楽観する。
しかし旅の途中で見かけた嫌な感じのドイツ人の存在とマルクとミラを呪う声が僅かな影をさす。それはハンガリー滞在中にどんどん膨らみ、婚約発表の場で見えない何かがミラが被る王冠を盗んだ!? 結婚式では姿は見えないのにシュトーリッツの声が聞こえて、恐怖は頂点に達した!
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「ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密」或いはヴェルヌ版透明人間です(・∀・)
ウェルズも「透明人間」で危ない科学者の話を書きますが、こちらは危ないストーカーの話です。呪いの言葉を発したり、盗みを働いたり、誘拐しようとしたり……こちらの方が色々ヤバい。やはり男のストーカーって洒落にならないぐらい危険ですね。
不可視の謎もヴェルヌにしては非現実的なので驚異の旅というよりかは幻想小説っぽいです。
結末がヴェルヌ史上こんな結末があるか。冒険小説でハッピーエンドを歌うヴェルヌがこれで良いのかよ!! 息子がいなかったら絶望しかないですよ。・゜・(ノД`)・゜・。
解説読んで気づきましたが、「カルパチアの城」も本作も実体の無い女性を熱愛している男性が登場するんですよね……純愛の2文字で結ぶには怖い愛です。そう考えるとマルクも異常人物ということに……
「ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密」でした(・∀・)/
次はシムノン初の女性主人公!?(*^o^*)/