ジョルジュ・シムノン No.84◇可愛い悪魔◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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"可愛い悪魔"が本物の悪魔に付き纏われた時、ゴビヨーの周囲に微かな異変が……

 
 
 
◇可愛い悪魔◇ -En cas de malheur-
ジョルジュ・シムノン 秘田余四郎 訳
 
 
その夜、戸外には、こまかい、温い雨が降っていた。パリ控訴院弁護士ゴビヨーは、事務室で一人の依頼人と対峙していた。訪問客の顔はまっこうから向けられた電燈の光に、残酷に照らし出されていた。見も知らぬ、貧弱な身体つきの小娘だった。だが、そんな小娘のくせに、娘は友人とピストル強盗を働いたのだ。強盗は失敗し未遂に終って、官憲の手が迫っている。ゴビヨーの評判を聞いて、弁護を頼みにやってきたのだった。
娘は金も持っていなかった。そして、一か八かの勝負を挑んできたのだ。娘は、ぐるりと事務室を見廻すと、書類で塞っていない一隅に目をとめた。娘は、バンドのところまでスカートをまくりあげ、仰向けになって囁いたのだ……。
「牢屋に入れられないうちに、使ってちょうだい」
ピストル強盗を働いた小娘のような娼婦の弁護を、なぜ控訴院つき弁護士ゴビヨーが引受ける気持になったのか。ジャン・ギャバン、ブリジッド・バルドオ主演映画『可愛い悪魔』の原作である。
 
 
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著名な弁護士ゴビヨーはかつての上司アンドリュウの妻ヴィヴィアーヌと関係を持ち、結婚するもかつて自分に弁護を頼んだ不良娘イヴェット共関係を持っている。ヴィヴィアーヌは去らなければ問題無いとそれを黙認してはいる。
しかしそのイヴェットに付き纏う青年マゼッティが現れたこと、イヴェットに匿う為のアパートを与えたことでヴィヴィアーヌとの空気が変わる。そして行った先のカンヌで買い物に出たイヴェットが行方不明になり、マゼッティ青年に殺害された刺殺体で見つかる……
 
 
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「可愛い悪魔」です(・∀・)
久しぶりのシムノン・ノンシリーズです。今回は映画「可愛い女」の原作にもなった作品です。調べたら去年公開されたサスペンス映画らしい映画ばっかり出てきました。そっちじゃなーい!
 
 
本作は愛人イヴェットに付き纏う青年が現れたことでゴビヨーとヴィヴィアーヌの夫婦仲の空気が微妙に変わり、イヴェットの妊娠と死によって結局は良い方向に向かっていかない、ヴィヴィアーヌが自分にとって「存在しない」ことを目の当たりにしながらも隣にある生活を続けるというシムノン特有の霧雨の寒々しさと虚しさが満ちています。
特に大きな起承転結がなく、心情の変化も大きく無いですが、確かに虚しさと寒々しさを感じるのだから不思議です。
 
 
シムノン作品にはつくづく幸福な登場人物はいません。そりゃあのメグレ警視も夫人でさえも虚しさを感じる時があるのだから当然ですよね……
 
 
「可愛い女」でした(・∀・)/ 
次は西部の探偵が久々に登場!(*^o^*)/