北極の氷を溶かすべく、地軸を変動させるために大砲一発ぶちのめせ!?
◇上も下もなく◇ -Sant Dessus Dessus-
ジュール・ヴェルヌ 石橋正孝 訳
巨大な大砲に取り憑かれた愛すべき紳士たちが活躍するガン・クラブ三部作を一巻に収録。『月を回って』からおよそ二十年、地球に帰還した大砲屋の次なる目標は、北極。その顛末を語る『上も下もなく』は、ヴェルヌの過激なパロディ精神を炸裂させ、三部作をしめくくる。世界初訳の補遺、挿画128葉を収録した特大巻。本邦初の完訳。
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月に人を乗せた砲丸をぶっ放すという前代未聞をやらかして20年後。アメリカの『北極実用化協会』という団体が北極を競売にかけ、譲渡するという突拍子も無い広告を出した。このとんでもない競売に参加の名乗りを上げたのさイギリス、デンマーク、スウェーデン=ノルウェー連合、オランダ、ロシアの5カ国とその『北極実用化協会』なる謎の会社。この会社は一体何なのか? ライバル同士の5カ国が結託して調査しても分からない……
オークションが始まり、北極は81万4000ドルでアメリカの『北極実用化協会』の領地になった。商談成立の場で出た名前はインピー・バービケインーーあの砲丸クラブの会長じゃないか! そう、『北極実用化協会』とは砲丸クラブの仮の姿だったのだ!
彼らの真の目的は北極に眠る炭鉱を掘るべく、彼らの愛する砲丸で地球存在して以来の地軸を動かして気候を一定にさせることだった! さすがは砲丸クラブ、突拍子も無いことをやりたがる! しかし地軸が変動した場合、地球の環境は激変し、大災厄に似た影響が生じるのでは無いか? これらの不安を欧米列強らは巧妙に掻き立て恐怖を実体化し、実際に計算をしたJ=T・マストンは捉えられる。しかしバービケインらはうまく逃亡した。彼らは一体どこで地軸変動計画の大砲を撃つのか……刻々とその時は迫る!
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「上も下もなく」です(・∀・)
今までは「地軸変動計画」という邦題で知られていた作品でこちらの方が何が起きるのか一目瞭然ですね。
砲丸クラブがとうとう狂いました。奴ら、自然と神を冒涜します。
他にどう言いようがありますか。北極にある石炭を掘るためだけに北極の氷を溶かすべく、環境の激変どうでも良しに地軸を動かそうとするんですから……こいつら、アメリカ以外はどうでもいいんだな……引くぞ。もちろん欧米やそれを新聞で知った世界各地はたまったものではありません。砲丸クラブは一気に敵になります。
今回の話は地軸を変動させるための計画云々よりもそれが実現してしまうまでの描写の方が力が入っています。結末から見て分かるようにこの話、風刺だらけです。親米国家フランスより風刺を贈られました。
しかもこの話、前の2作で散々いいとこ取りしたミシェル・アルダンが出てこないんですよね。フランス人の彼が出て来ず、新しいフランス人が出てくるところでこの話の結末は推して知るべしでしたね。
「上も下もなく」でした(・∀・)/
次はイシグロ氏の最新作です(*^o^*)/