泉鏡花 No.5◇鏡花短篇集◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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気がついた時には既に異界へ。

 
 
 
◇鏡花短篇集◇
泉鏡花 川村二郎 編
 
 
現実界を超え、非在と実在が交錯しあう幻視の空間を現出させる鏡花の文学。その文章にひそむ魔力は、短篇においてこそ、凝集したきらめきを放ってあざやかに顕現する。そうした作品群から、定評ある『竜潭譚』『国貞えがく』をはじめ、絶品というべき『二、三羽―十二、三羽』など9篇を選び収める。
 
 
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1.竜潭譚
 
 
2.薬草取
 
 
3.二.、三羽ーー十二、三羽
 
 
4.雛がたり
 
 
5.七宝の柱
 
 
6.若菜のうち
 
 
7.栃の実
 
 
8.貝の穴に河童のいる事
 
 
9.国貞えがく
 
 
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うつくしき人は寂として石像の如く静なる鳩尾のしたよりしてやがて半身をひたしつ尽くしぬ。
 
 
ーーー泉鏡花「竜潭譚」より。
 
 
「文豪ストレイドッグス制覇計画」3巻編。身投げした鏡花ちゃんと一緒に海に投げ出された敦くんは彼女を武装探偵社に運びます。国木田さんは敦くんに鏡花ちゃんを軍警に連れて行くように命じますが、同じ「助けられた」経験を持つ敦くんはその命令に頷くことができない……
そんな3巻の最初の話は「うつくしき人は寂として石像の如く」。
 
 
 
 
これは「行く方も躑躅、来し方も躑躅」という名文でも知られる1の「竜潭譚」の一文です。毒虫に刺され、顔が変わってしまった若者千里が九つ谺という不思議な場所で美女に看護される話です。……なんか「高野聖」みたいな話だな。また2も花が咲き誇る不思議な場所で美女と出会う、これまた似た話です。
 
 
絵は2巻の最後ですが、まさに石像の如く寂しそうな佇まいで鏡花ちゃんは初登場します。敦くんという助けてくれた人の隣に立つことでだんだんと鏡花ちゃんにも変化が現れます。ちょっと前→可愛いです。今→カッコいいです。
 
 
あともう1つ。鏡花は鳥が好きでした。終の住処になった麹町の家の庭には「雀のお宿」なる場所があって時間や余裕のある時はすゞと縁側に座って眺めていたそうな(*´-`)(*´ー`*)
 
 
 
4巻の「絶え間なく過去に押し戻されながら 前編」より。窓の外には雀らしい小鳥の姿が。この直後、敦くんは鏡花ちゃんとの同棲スタートを知ります。きっと鏡花も雀の鳴き声と共に起床したに違いなく、雀は「同棲」という史実を示唆させる小道具になっています。となるとやはり鏡花ちゃんは敦くんと共に幸せにならねばならんのです。
 
 
2、4、6は日常や回想の話かと思いきやいつの間にか異界に足を踏み入れている感満載です。鏡花の小説の良さは現実と異界の境界線が曖昧で、はたと気がついた時にはどっぷりはまりこんで夢中になれるところですね。中島敦も同じことを言っていましたが、流石ですね。
 
 
「鏡花短篇集」でした(・∀・)/ 
次はメグレ……果たしてそんな余裕があるのだろうか?(*^o^*)/