ジョルジュ・シムノン No.82◇メグレの失態◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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メグレは初めから終わりまで失敗してしまう……

 
 
 
◇メグレの失態◇ -Un Echec de Maigret-
ジョルジュ・シムノン 大友徳明 訳
 
 
内務大臣の紹介で司法警察に身辺の警護を求めにきた食肉業者フュマルは、意外にもメグレの幼な馴染みだった。悪辣な遣り口で村の肉屋から業界一の男にのし上ったこの男には、当然敵も多い。狙われている証拠として、彼は脅迫状を数通差しだした。フュマルに不愉快な思い出しか持たないメグレは、この訴えにいささか冷淡だったかも知れない。フュマルが帰ったあとに、彼の女秘書が出頭してきて、脅迫状はフュマルが自分で書いたものだと告げた。メグレはその日の午後フュマル邸に出かけ、護衛の手はずをととのえる。だが翌朝、フュマルは射殺体となって発見された……。
 
 
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パリに旅行に来た英国の老婦人の失踪事件にパリ市警が忙しい中、メグレの元にフュネルという男が訪ねてくる。最初は覚えがなかったが、話をしているうちに故郷のサン・フィアクルの幼馴染だと分かるが、同時に彼には不愉快な思い出しかないことも思いだす。
 
 
フュネルは肉屋業界一の男だが、悪辣な手段でその座に登り着いたので当然敵が多い。特にここ最近は脅迫状まで届くようになり、メグレに護衛の依頼をしに来たのだ。メグレは取り敢えず返事をするが、取り合う気になれない。フュマルの秘書に狂言であることを告げられるとますますその気になれない。
 
 
とりあえずフュマル邸には赴き、護衛の手はずは一応整えたが、その翌日フュマルが殺されたという電話が入る……
 
 
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「メグレの失態」です(・∀・)
 
 
「失態」……ミステリーの中で出ではいけない言葉です。しかし題名に出るからには「失態」を起こすのです。……それもメグレが。
 
 
確かに失態です。そもそも最初の一歩からして失敗しています。護衛をつける段階できちんと関係者から話を聞けば良かったのです。そしたらきっかけが単純だったことが分かったのに。そもそもメグレとフュマルには共通点があったのだからそこを抜きにしてはいけなかったのです。あまりにも現在軸で考え過ぎたためにメグレは最後の最後も失敗してしまうのです。え! この失敗、メグレは初めてじゃない!?
 
 
シムノンといえば女の造形が面白いですが、今回はフュマルという男が興味深い。公私共々、わざわざ悪辣な手段を選ぶ男、人を不快にさせたり、破滅させたりしなければ気が済まない男、しかし絶対的な孤独を抱え、周囲の人間は脅しの甲斐無く、したたかな裏切り行為を許してしまった男……両極端な面がこのフュマルという男を報われているようで実はてんで報われない男にしています。
 
 
「メグレの失態」でした(・∀・)/ 
次はホック、奇妙な依頼の果ては……(*^o^*)/