ジュール・ヴェルヌ No.24◇南十字星◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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見事なダイヤモンド『南十字星』を巡るアフリカ炭鉱の栄枯盛衰!

 
 
 
◇南十字星◇ -L'Etoile Du Sud-
ジュール・ヴェルヌ 曽根元吉 訳
 
 
斜長方形十二面体の黒い結晶、七彩の光を放つ432カラットの「南十字星」の行方を追って、猛獣の咆哮する中央アフリカの原野へ踏み入る青年科学者とその恋人、そして荒くれ男たち─イギリスの植民地主義的収奪の時代の南阿を舞台に、ヴェルヌ一流の奔放な構想、巧妙な語り口で展開される冒険サスペンス・ミステリーの本邦初訳版
 
 
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英国領南アフリカのダイヤモンド炭鉱。貧乏な科学者シプリアン・メレは炭鉱の持ち主であるワトキンズの娘アリスと結婚したいと望んでいるが貧乏なために父親にはねつけられる。シプリアンはめげずに自らも掘ってダイヤモンドを探そうとするが、見つからず嫌気がさしてしまう。
 
 
そこで思いついたのが人工的にダイヤモンドを作ることだった。結果はなんと成功。それも432カラットという規格外の見事なダイヤモンドが出来上がった。しかしこんなダイヤモンドが人為的に作ることができるなら宝石産業は一気に破産してしまう。そんな懸念を他所に『南十字星』と名付けられたそのダイヤモンドを公開するが、そのダイヤモンドがシプリアンの使用人によって盗まれてしまった!?
 
 
無実を信じたいシプリアンだが、そのマタキッドはその直後に姿を消してしまった。疑いは濃厚である。半狂乱に陥ったワトキンズ氏は『南十字星』を見つけた者に娘のアリスと結婚させると宣言し、シプリアンはライバル三人とアフリカの原野に飛び出すことになるーーー
 
 
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「南十字星」です(・∀・)
 
 
「必死の逃亡者」と同様、なんらかの事件によって驚異の旅を強いられるパターンです。そこに当時の産業であるダイヤモンド炭鉱と大英帝国の植民地政策を皮肉る内容を込みでお送りします。けれど英国人のワトキンズ氏は嫌なのに娘のアリスは英国人だけど良いのか。美人だからか?
 
 
恋するフランス人シプリアンの科学と行動の波瀾万丈の大冒険です。キリンを馬代わり、原野で障害物競走……原野を探検するところはやはり面白いです。
 
 
人工ダイヤモンド。ダイヤモンドは物凄く高価ですからできたら普通の人にも提供できますよね。しかし希少性は下がりますから産業としては破綻してしまうので「実現できたら良いか」と聞かれても即答できない……今日では人工ダイヤモンドは劇的に進化していて天然物と見分けるのはかなり大変らしいです。憂慮面はやはり産業面。しかし今日のダイヤモンド炭鉱は環境問題や紛争問題に繋がるし、人工でもダイヤモンドが提供できれば良いんじゃないのかな……そりゃ天然物が欲しい人はいるだろうけど。
 
 
さて盗まれた『南十字星』は一体どこに? という謎が終盤間近まで引っ張られますが何故誰もその存在に気がつかなかったのか。特にアリス。あんた飼い主でしょうが。しかも前科もあるってんのに。三人の男の死がこれじゃあ骨折り損じゃありませんか! シプリアンも散々だったというか……しかもダイヤモンドは意外な運命を辿ってしまうし……やはり宝石は人を幸せにも不幸にもして気まぐれに姿を消す魔物なのかもしれません。
 
 
「南十字星」でした(・∀・)/
次は久しぶりのカズオ・イシグロ氏です(*^o^*)/