ジュール・ヴェルヌ No.23◇緑の光線◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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緑の光線を求めて旅する乙女の恋と冒険!

 
 
 
◇緑の光線◇ -Le Rayon Vert-
ジュール・ヴェル中村三郎・小高美保 訳
 
 
水平線に沈む夕陽が最後に放つ、翡翠のような光を目指して、島から島へーーー
ヴェルヌ、異色の恋物語。
幻の初期短編、『メキシコの悲劇』併録。
 
 
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1.緑の光線
  (Le Rayon Vert)
  ……サムとシブの二人の叔父に育てられたスコットランドの名家キャンベル家の令嬢ヘレーナ。そろそろ結婚させよう……と持ちかけたら「緑の光線を見るまでは結婚しない」と言い出した。晴天の日の日没の、ほんの一瞬だけ見られる美しい緑の光……それを見るために一行は旅に出た!
 
 
2.メキシコの悲劇
  (Un Drame au Mexique)
  ……スペイン戦艦コンスタンシア号でマルティネス大尉、ホセ甲板員による謀反が起こった。艦長ドン・オルテバは殺され、他の将校らは無人島に置き去りにされた。マルティネス大尉とホセは被占領国であるメキシコにその戦艦らを売ろうとメキシコシティーを目指して陸路を歩くが……
 
 
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「緑の光線」です(・∀・)
 
 
長編1作だと思っていたら短編も込みの2作だったので1作ずつ紹介していきます。
 
 
まず「緑の光線」。タイトル的にス○ー・ウ○ーズで登場するラ○トセー○ーみたいなのが登場するSFかと思いましたが、レーベル的に違うし(「黒いダイヤモンド」とか)、最先端技術ものか「驚異の旅」シリーズものかとか思ったらまさかの自然現象を見にお嬢様が旅するだけの話です。いや! 本当にサムとシブが決めた婚約者アリストビューラス・ウルシクロスというギリシャ人の学者みたいな名前の薀蓄を披露しては水を差す男に2度も邪魔されながら途中で出会った芸術家オリバー・シンクレアと一緒に緑の光線を見届けようとするお嬢様の話なのです! 
 
 
ヴェルヌには珍しく最先端技術のない作品です。スコットランドの海で災難にはあいますが、別に未開の土地に行くわけでもないから「驚異の旅」シリーズでもないし……本当に恋の話なんですよね。というより人(=サム・シブ兄弟)から与えられたものを拒否して自ら納得できるものを獲得する「幸福を探す」話なのです。あとがきに「緑の光線は青い鳥なのかも知れない」旨が書いてありましたが、その通りだと思います。けれどあんな男なら誰だってお断りですわ……合コンで嫌われるタイプのベスト10に入りますよ……
 
 
ちなみに作品の「緑の光線」はヴェルヌの想像の産物ではなく、「グリーン・フラッシュ」と呼ばれる実在する、本当に珍しい現象です。それこそサンピラー現象やダイヤモンドダスト並みに条件が揃っていないと見れなくてヘレーナがブチギレた理由も納得できます。
 
 
2作目「メキシコの悲劇」は本邦初訳。スペイン戦艦をメキシコに売ろうとする反逆者たちを襲う恐ろしい話です。やはり罪人はどこかで裁かれる。
 
 
「緑の光線」でした(・∀・)/
次は若い女の死をめぐります(*^o^*)/