カズオ・イシグロ No.2◇遠い山なみの光◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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人は喪われたものを思い出し、それでも「光」目指して歩くーーー

 
 
 
 
 
 
◇遠い山なみの光◇ -A Pale View of Hills-
カズオ・イシグロ 小野寺健 訳
 
 
イギリスに暮らす悦子は、娘を自殺で失った。喪失感に苛まれる中、戦後混乱期の長崎で微かな希望を胸に懸命に生きぬいた若き日々を振り返る。新たな人生を求め、犠牲にしたものに想いを馳せる。『女たちの遠い夏』改題。
 
 
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戦後、渡英した悦子は長女の景子を自殺で喪い、深い喪失感に陥っていた。悦子は若い時代ーーー戦後の長崎で過ごした日々とそこで出会った人々を思い出す。最初の夫、二郎の父親の緒方さん、近所のうどん屋さんの女将の藤原さん、二郎の友人、松田重雄、そして親交を深めた佐知子・真理子母娘……絶え間ない変化に流れされる者、争う者、流れに乗る者、それを拒否する者。そこには衝突と葛藤があった。悦子は自分のアイデンティティを守るために景子を犠牲にしてしまったことに自責の念に駆られる……
 
 
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「遠い山なみの光」です(・∀・)
 
 
お待たせしました。約12日かけて読み上げました。な、長かった〜……やはり初読み作品を原書で読むのはハードルが高すぎました……せめてハリポタからやるんだった……ちなみに原書は父が貸してくれました。感謝←ここで言うことではない。 
 
 
読んでいて知っている単語はたくさんあったため、レベル高い高校の英語の教科書を読んでいる気分でした。けど知らない単語も同じくらい多かったため、電子辞書を片手に読んでいました。そのうちそれもキリがなくなってきたため、後半は全く引かずに「こういうことを話しているんだろうな」といった漠然と理解した形で無理やり進めました。そうなると日本語訳も無いと無理ゲーなため、やっぱり翻訳本も買いました。
この単語はこう訳すのか〜と考えながら読んで面白い体験でした。日本語に訳するのは難しいと言いますが、確かにその英単語の意味を理解し間違えるとカズオ・イシグロ氏が言わんとすることを読者は全く理解できていないわけで……翻訳者って凄いと尊敬した瞬間でした。
 
 
さて、本書。娘の自殺をきっかけに若い頃過ごした戦後激変を強いられた長崎での日々を回想します。過去を回想するのは「日の名残り」と同じです。そして変わらざるを得なかったもの、捨ててしまったもの、犠牲にしなければならなかったものーーーまとめて「過去に置き去りにしてしまったもの」を思い出します。
舞台は世界大戦が終わった長崎。原爆が落ち、戦争が終わり、復興へと駆け足になった時代。ある者は捨てられたものを拾い、ある者は暮らしぶりを変えざるを得なくなり、ある者は先人の教えを否定し、思想を変え、ある者は何も先が見えない未来を期待を込め、ある者はその未来に背を向けーーーその人たちの姿は弱くて小さくてしかし高潔です。なぜならその誰もがどんな形にしろ未来に希望を抱いているから。
悦子の次女、ニキはそんな彼らとは真反対の、型破りで先に希望があっても無くても未来を切り開くタイプの人間です。悦子は彼女とはぎこちないですが、読み進めるうちに何かが変わっていきます。
 
 
何を失うか分からない、何が間違えていたかも誰も教えてはくれない。それでも人々は遠い山なみの向こうに見える光を目指して歩いていた。
カズオ・イシグロ氏の作品は現在と過去が交互に話され、過去の思想や人々を思い出しながらも改めて前を向いて生きていく人々が静かな口調で語られますが、これが「昔は良かった」系だったら自分は死んでる←確信。
 
 
「遠い山なみの光」でした(・∀・)/ 
次は超! 久しぶりのエドワード・D・ホックです(*^o^*)/