カズオ・イシグロ No.1◇日の名残り◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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懐かしい思い出、懐かしい人々、戻らない時間。美しかった過去は夕焼けの中に。そして前を向こう。

 
 
 
◇日の名残り◇ -The Remains of the Day-
カズオ・イシグロ 土屋政雄 訳
 
 
品格ある執事の道を追求し続けたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々ーー過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。英国最高峰の文学賞、ブッカー賞受賞作
 
 
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スティーブンスは長年仕えたダーリントン卿亡き後も邸、ダーリントン・ホールに残り、アメリカ人ファラディに仕えることになった。しかしアメリカ人で実業家のファラディとは思考と文化の違いからうまく奉仕できない日々が続いていた。
 
 
そんなある日、スティーブンスは同じくダーリントン卿に仕えていた女中頭ーーー当時はミス・ケントンだったがーーーから手紙が届き、彼女に会いに短い旅に出た。手紙には何も書いていないけどミス・ケントンは幸せではないのだろうか、ダーリントン・ホールに戻りたいのではないだろうか? 不安にも似た気持ちを抱え、スティーブンスは美しい田園風景を車で駆ける。
 
 
道すがら思い出すのは執事の鑑だったが、ある時その執事を辞めなければならなかった亡父のこと、「偉大で」「品格のある」、「本物の」紳士だったダーリントン卿のこと、卿を中心に行われた大戦前の外交会議、そして衝突しながらも良き仕事仲間だったミス・ケントンのことーーー
 
 
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10月に「読書の輪」外に読むと決めているイーデン・フィルポッツが読み終わりました。誰にしようかなー書店で買いやすい作家が良いなーと悩考えているうちに名前だけ知っていたカズオ・イシグロに行き着きました。
 
 
この人の名前だけは知っていてコミック「エマ」の紹介で「確か執事の話を書いていたよなー」という印象しかありませんでした。「ダウントン・アビー」にハマったわたしなら絶対に面白いと思うと親にも勧められました。しかしわたしは本書「日の名残り」のあらすじを知ってからというものの、どうしても読むことが抵抗がありました。
 
 
……というのもあらすじを読んで「……これ、『昔は良かったなぁ』って懐かしむ話なのか!?」と引いたから。
わたしは「昔は良かった」という言葉が大嫌いでもうそれこそ聞く機会があれば暴言吐き出す並みに嫌いです。こう言う人に限って未来に向けて改革とかもしないし、周りの空気を不穏にさせるし、毒にしかならないんですよね。
 
 
だから読んで嫌な気分になるぐらいなら……と本書を含め、イシグロ氏全体で避けていました。……しかし昨今ノーベル賞を取ってやっぱり気になるし……で読みました。ついに。
 
 
「昔は良かったなぁ」って話じゃなかった。確かに昔を思い出す話ではあるけれど過去は過去、過去はいつの間にか美しい思い出になって静かに佇み、現在の立ち位置から「明日からまた頑張ろう」と前を向かせてくれる話でした。
スティーブンスは「偉大な執事とは」、「品格とは」という問題を常に追求し、手紙をくれたミス・ケントンに対し、「もしかしていま、不幸せなの? ダーリントン・ホールに戻りたいの?」という疑問を携えて会いに行くわけですが、ミス・ケントンは長い時間をかけて幸せを手に入れ、静かにーーーというかいつの間にかダーリントン・ホールに別れを告げていました。
スティーブンスは新しい主人アメリカ人ファラディ氏となかなかうまくいかず悩んでいましたが、もしかしたら自分にも改善できるところがあったのかも、戻ったら本腰を入れてジョークの研究をやってみよう、もしかしたらファラディ様をびっくりさせられるかもしれないじゃないか、と決意を新たにするシーンは本当に好きです。1、2を争うぐらい好きです。過去は過去として美しい思い出にしつつも、それを引きずらないで「明日からまた頑張ろう」と思えているのだろうか、わたしは?
6日目の夜にスティーブンスが考えたことは、そのまま人生の真理かもしれない。
 
 
そういうわけで読む本が手元になくって「どうしよう!」となったらカズオ・イシグロ氏のターンです。そういうポジションに置くのはだいぶ失礼ですが←、わたしにはわたしが決める順番があるので!! 
 
 
「日の名残り」でした(・∀・)/ 
次は空で! 海で! 繰り広げられる人間ドラマ!(*^o^*)/