翼を無くした、迷える天使たちへ。
◇天使たちの探偵◇
原尞
ある女のひとを守ってほしい―沢崎の事務所を訪れた十才の少年は、依頼の言葉と一万円札五枚を残して、雨の街に消えた。やむなく調査をはじめた沢崎は、やがて思いもかけぬ銀行強盗事件に巻き込まれることに…私立探偵沢崎の短篇初登場作「少年の見た男」ほか、未成年者がからむ六つの事件を描く、日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞受賞の連作集。
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1.少年の見た男
……「ある女性を守って欲しい」と沢崎に依頼して来たのは10歳の少年だった。沢崎は無論断るがまんまと依頼料5万円を受け取らされてしまった。やむなく捜査を始めるとなぜか銀行強盗に遭遇してーーー
2.子供を失った男
……探偵事務所の窓から白薔薇を車道に投げる男を見かけた沢崎。そのあとその男ーーー娘を轢き逃げで亡くしたチォエ・ジョンヒが訪ねてき、昔の手紙をダシに脅され、受け渡しに同行して欲しいと依頼される。
3.二四〇号室の男
……沢崎は西尾という男の依頼を受け、娘深雪の素行調査を行なった。深雪を尾行することはすなわち西尾の行動を知ることになった。娘は西尾の行動を監視していたのだ。
4.イニシアル"M"の男
……間違い電話で自殺直前の女性と話すことになった沢崎。その時は受け流すが、明日の朝刊でその女性ーーー朝吹由美が本気であったことを知った。しかし……
5.歩道橋の男
……沢崎のところに〈東京第一興信所〉の成島が訪ねて来た。伏見という女性が自分の孫を探しているのだが、その孫は凶悪の少年犯罪者でそれを知ったら彼女はショックを受けるから教えないように釘を刺されたのだが、沢崎のところにまず伏見という女性は来ていない。
6.選ばれる男
……柏木俊一の母親から息子を探して欲しいという依頼を受けた沢崎。どうやらジュンという少年の殺害容疑をかけられたらしい。もし本当に無実なら逃げるのは得策ではない。沢崎は少年補導員で選挙中の草薙一郎を訪ねる。
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「天使たちの探偵」です(・∀・)
私立探偵沢崎シリーズ3冊目。短編集です。それも未成年が登場する短編6作です。
チャンドラー作品に未成年やティーンエイジャーは登場しませんが、ここでは未成年が出るのが特徴の作品をリストアップしています。子どもでもなく、大人でもない彼らは子どもからの脱出と大人からの押し付けに抵抗しています。そんな彼らは犯罪に片足を突っ込むことも珍しくありません。未成年とハードボイルドは意外に相性が良いのかも……
彼らは被害者だったり、加害者だったり、容疑者だったり、はたまた依頼人だったり……大人になりきれないけれど大人になりたい、大人にはなりたいけど大人への服従には我慢ならない未成年たちの無邪気で未熟な抗いが見えます。
沢崎も大人の1人なので沢崎に対しても彼らは立派に反抗したり、見下したりします。でも沢崎ってぴしゃりと厳しいけど見下してはいませんよね。現実を見ろと言わんばかりに突き放してはいますが。
番外編では手荒い錦織警部やガラ悪い警官たちは出てこず、比較的温和な警官たちが出て来ます。しかし沢崎についていけてないという……
「天使たちの探偵」でした(・∀・)/
次はもろチャンドラーを意識したような←題名の話です(*^o^*)/