ジュール・ヴェルヌ No.3◇20世紀のパリ◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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ーーーさあ、20世紀のパリに行きませんか?

 
 

 
◇20世紀のパリ◇ -Paris au XXe Siecle-
ジュール・ヴェルヌ 菊池有子 訳 コリーヌ・ブレ 前書
 
 
時は1963年。ヴェルヌが執筆した時から、ちょうど100年後を想定した時代。パリは文明の発展を謳歌していた…。執筆時「荒唐無稽」と評された本書は、130年の時を越え、現代文明に新たな意味を問いかけている。
 
 
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1960年、パリ。科学、工業、産業の発展が最高潮に達し、その一方で文化、芸術という分野が蔑視され、衰退し、消滅する運命にあった。
 
 
大規模な公的教育機関《教育銀行》からラテン語詩で表彰されたミッシェルは超高度産業社会でははみ出し者であった。叔父夫妻の斡旋する銀行勤めにも馴染めず、早々に閑職の帳簿係に回されるが、その同僚クインソナはなんとミッシェルの亡き父親から教えを受けた音楽家だった! ミッシェル、クインソナ、もう1人ジャック・オーバネは社会のはみ出し者同士友人になる。
 
 
同じ頃ミッシェルはこれまたはみ出し者の伯父ユグナンとも再会した。理解者はいるが、ミッシェルは嫌な銀行の仕事に甘んじざるを得ない。しかしそれも自らのミスで失い、とうとう困窮のどん底に……
 
 
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「20世紀のパリ」です(・∀・)
この話は1860年に書かれたかなり初期の話です。ヴェルヌが初めて書いたSF小説とも言われていますが、長年陽の目を見ず、1991年に子孫が見つけるまで金庫の中で埃を被って眠っていました。
 
 
というのもこの作品は当時「暗くて荒唐無稽」と出版社から却下されたからです。
なぜならこれは産業、工業が高度に発達した資本主義社会を文化と芸術を奪い、人間性を奪うと警告した一種のディストピア小説だったからです。
ヴェルヌが想像した20世紀は科学、産業革命が発展した幸せな世紀ではなく、それにより人間性の欠如した不幸な世紀でした。当時パリは科学、産業革命が始まり、それらは賞賛されるものだった。だから世間はヴェルヌの考えを切り捨てたのです。
……って何気なく書いたけどこれ、史上最初のディストピア小説じゃないか?
 
 
そんなわけでヴェルヌはこの原稿を金庫に入れ、そのまま忘れ去られ、そのうち作家も死んで、約130年の時が経ってやっと発見されたというわけです。
 
 
主人公ミッシェルは人間が機械のように働く中で人間性を失わない、芸術を愛する夢見る青年です。しかしそんな彼は悉く高度資本主義に敗れ、ラストは悲惨な最期をほのめかしています。人間の敗北を見た気分です……今の世界を見たらヴェルヌは何を思うだろう。
 
 
「20世紀のパリ」でした(・∀・)/ 
メグレにも初めての頃があったのです!(*^o^*)/