何もかもに興味を持ち、何もかもを知りすぎた男の向かう先は。
◇知りすぎた男◇ -The Man Who Knew Too Much and Other Stories-
G・K・チェスタトン 井伊順彦 訳
巨匠G・K・チェスタトンが、国内政治や国際関係を背景とした事件に与する人間を鋭く描く。さまざまなことを知りすぎているゆえに苦悩するホーン・フィッシャーと、相棒役である新進政治記者のハロルド・マーチ。彼らの推理譚八編と、ノンシリーズ二編を収録。
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
1.標的の顔
(The Face in the Target)
……若い新聞記者ハロルド・マーチは釣りをしている男と自動車事故に出くわす。これがマーチと知りすぎた男ホーン・フィッシャーの出会いだった。
2.消えたプリンス
(The Vanishing Prince)
……プリンス・マイケルと呼ばれる男が姿を消した。その男を探しにフィッシャーらは塔に潜入するが。
3.少年の心
(The Soul of the Schoolboy)
……聖パウロ硬貨を見に来た甥とその伯父。しかしそこで煙突に潜った甥は姿を消し、聖パウロ硬貨が魔術のように消えた!?
4.底なしの井戸
(The Bottomless Well)
……底なしの井戸のあるゴルフ場で殺人事件が起きた。フィッシャーは図書館で二者択一を迫られることになると言う。
5.塀の穴
(The Hole in the Wall)
……プライアーズ・パーク邸宅にて。主のブルマー卿が行方不明になった。スケート靴を持ったまま。ブルマー卿は一体どこにいるのか。
6.釣り人のこだわり
(The Fad of the Fisherman)
……政治家を訪問する途中のマーチは橋に飛び移る男の姿を目撃する。それが後々の殺人事件に関係あると誰も思わなかった。ーーーホーン・フィッシャー以外は。
7.一家の馬鹿息子
(The Fool of the Family (The Temple of Silence))
……自分は一家の馬鹿息子なのだと言うホーン・フィッシャー。そんな彼の若かりし日々の政治活動。
8.像の復讐
(The Vengeance of the Statue)
……マーチはついに英国政界の腐敗に対する憤怒をフィッシャーにぶちまける。フィッシャーはその憤怒にどう応えるのか。そしてフィッシャーの伯父を殺した犯人は誰なのか。
9.煙の庭
(The Garden of Smoke)
……キャサリン・クロフォードはモーブリー夫人の話し相手として雇われた。しかし初日早々に騒ぎが起きた。モーブリー夫人が死んだのだ!
10.剣(ソード)の五
(The Five of Swords)
……決闘について論議するフランス人フォランと英国人モンク。そんな話をしている最中、人が殺されたという声を聞く。その男の死は決闘に関係あるようで……!?
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
「知りすぎた男」です(・∀・)
チェスタトンは推理小説家だけでなく、文芸・政治・社会評論家でもありました。
本書はその政治評論家のチェスタトンの一面がよく出ている作品です。
これを読むと英国人の政治的考察、近隣諸国との関係がありありと分かります。
主人公たるホーン・フィッシャーは非常に複雑な人間です。知り過ぎているゆえに気だるげでどこか眠そうな男。世の中の不条理を認識し、是認する自分を否定しない、できない男。
フィッシャーの最終作「像の復讐」は圧巻です。
9、10はノンシリーズ。特に9は恋愛色もあり、女性主人公というところでチェスタトンらしくない変わった後味です。というかクリスティーっぽい←
「知りすぎた男」でした(・∀・)/
次回はカー初の歴史ミステリーです(*^o^*)/~