私は彼(とある戦闘機パイロット)のクローズアップを撮ろうと思って近寄った。すると、彼は途中で立ち止まって叫んだ。

「写真屋!どんな気で写真が撮れるんだ!」

私はカメラを閉じた。そして、さよならもいわないでロンドンに出発した。

ロンドン行の列車で、鞄には首尾よく撮影したフィルムがつまっていたが、私は自分を嫌悪し、この職業を憎んだ。だいたい、この種の写真は葬儀屋の仕事だ。私は葬儀屋にだけはなりたくない。万一、私が葬儀を関係するときには、参列者の方であることを心に誓ったのだった。

翌朝、一夜を寝込んだせいで、この気分は少し軽やかになった。私はひげを剃りながら、報道写真家であると同時に、優しい心を失わないでいることの難しさについて自問自答してみた。怪我をしたり、殺されたりしている場面ぬきで、ただのんびりと飛行場の周りに座っているだけの写真では、人々に真実とへだたった印象を与えるだろう。死んだり、傷ついたりしている場面こそ、戦争の真実を人々に訴えるものである。だから、私が湿っぽい気持ちにならないうちに、一本撮り終えたことはやはりよかったと思った。


フォトグラフス―ロバート・キャパ写真集

真実から目を背けない。
人から嫌われる勇気をもつ。
正しい行為であるならば最後まで自分の信念を突き通す。

中途半端を脱し、100パーセントの自分を知ったときにだけ、人生おいて輝く何かを残すことができる。

写真史上最も感動的で記憶に残る戦争のイメージと共に、そんな人生の教訓を授けられた。