『 霧の密約 』
伴野 朗 ( ともの ろう )
面白さ ★★☆☆☆ (ホシ二つ)
薀蓄はそこそこにのクラス
作者/伴野 朗について
1936年、愛媛県松山市生まれ。
朝日新聞社の秋田支局を振り出しに外報部、インドシナ特派員などを経て
上海支局長を務めるかたわら、執筆活動。
「五十万年の死角」で第二十二回江戸川乱歩賞、
「傷ついた野獣」で第三十七回日本推理作家協会賞連作短集賞を受賞。
鋭く深い歴史観を巧みな語り口に乗せた冒険・推理小説で知られ、
特に中国に取材した作品では他の追随を許さない。
主な作品には、他に
「三十三時間」
「必殺者」
「大航海」
「始皇帝」などがある。
【 この本の内容 】
1901年霧の都ロンドンである事件が発生した。
日英同盟の締結の外交交渉にあたっていた
日本の全権大使 林 薫(はやし ただす)が、
何者かに狙撃されたのだ。
現場に居合わせたスコットランド・ヤードの
フラナガン刑事は、早速捜査に乗り出す。
遺留品からポーランドの秘密結社が、
さらにその後ろで糸を引くロシアの影が浮かび上がる。
そのころ、ロシアの秘密警察オフラーナは、
清の実力者・袁世凱(えんせいがい)に
新たな刺客の派遣を依頼していた。
袁がロンドンに送り込んできた凄腕の刺客は
暗号名『朱雀』(すざく)。
京劇の女形役者出身の美貌の青年だった‥‥‥。
ここから、稀代の刺客『朱雀』とスコットランド・ヤードの
スペシャル・ブランチとの死闘が始まる。
この『朱雀』は、七星小刀の達人であり、
変装術の名手でもある。
女にも 英国人にも 老人にも 誰にでも変装できる。
林駐英公使を守るのは、織部啓介(林の遠縁に当たる書生)。
彼は、UCLで医学を学んでいる学生だが、
南派少林拳の名手・黄飛鴻(こうひこう)の最後の弟子として
飛翔力と蹴りが一体となった「鷹翼功」を使う。
これに、ロンドン留学中の夏目金之助(夏目漱石)が
絡みます。
小説としては、歴史の薀蓄(説明)が、随所に入りますので、
ちょっと興をそがれるところがあります。
これは、この小説が朝日新聞に連載されていたためでは
ないかと思われます。
歴史の薀蓄の捌き方を工夫いただき、最後の戦いで織部青年に
少林拳をもっと揮わせていただければ、ホシ四つだったと思います。
私的には。
それでも、筋立ても良く、物語の展開もスピーディで、とても面白い
本です。
極上のエンターテインメントですよ。
時間のある方は、一読あれ。
