小説『不祥事』 | 高井戸の住人のブログ

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本は歴史ものとSF、ミステリーときどき文学。
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2007年8月発刊の池井戸潤作品。

"狂咲"こと花咲舞と相馬健という2人の若手行員が、東京第一銀行の各支店を臨店指導しながら、本当の問題、不祥事を発見して解決して行く展開です。
面白おかしく問題を切って行くのかと予想していたけど、意外とシリアスです。
短編でメインストーリーを追って行くので、ストーリーに遊びが無いです。
『シャイロックの子供たち』のが暗めですが物語の構成はよく出来ていたように思います。

<目次と支店とあらすじ>
1.激戦区
自由が丘支店。
最近ミスが多い。
ベテラン女子行員が相次いで辞めて行った背景がある。
女子行員をコストと言い、発生したミスを現場個人の問題にする上司がいる。
定期中途解約の誤払いが発生していた。
盗まれた通帳、印鑑で引き落とされた詐欺だったが。。。

2.三番窓口
神戸支店。
現金入金と他店での引き落としのタイミングを狙っての詐欺。
銀行の処理手続きをよく知っている者、内部に犯行の協力者が。。。

3.腐魚
新宿支店。
顧客である百貨店の御曹司が融資課に在籍している。
以前プライドを傷つけられた顧客に融資をしようとしない。
『信義則違反』- 社内で決められたルール、手続きに従わない。

4.主任検査官
武蔵小杉支店。
小さな支店だったが抜き打ちで金融庁検査が入る。
融資先の評価を下げて貸倒れのための引当金を増やすことで有名な検査官が来たが、内部告発者がいた。

5.荒磯の子
蒲田支店。
蒲田は下請け製造業の町。
持っている技術を集めればロケットも作れると言われている。
処理量も多い上、いろいろのある客がいて、地獄の一丁目と呼ばれている。
混雑を待てずに大声を出して根は悪くない人。
見かけは紳士そうでも嘘を付きお金を騙し取ろうとする人。

6.過払い
原宿支店。
女子行員のミスで顧客に100万円の過払いが発生してしまった。
忙しいと人間はときどきとんでもない事もしてしまう。
必ず第三者による確認が必要。
支店を上げて顧客からお金を返してもらおうとするが。。。

7.彼岸花
八重洲本店。品川支店。
エリート役員に彼岸花が届く。
部下が送り主を調査してみると、自殺した人からだった。
花咲舞。
『この銀行には大勢のひと働いています。出世や銀行の利益のために、そのひとだけではなく家族の幸せまで奪う、そんな組織にして欲しくない。』

8.不祥事
八重洲本店。
百貨店全従業員9000人分の給与データの入ったMOが本店内で消えた。
犯人探し。

組織も社会も『信用』で成り立っている。
大部分の人は自分の職務を正しく全うしようとしているが、お金とか組織とか出世とかプライドとかが、人に間違った意識を植え付け、組織を腐らせて行く。
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