スローウォーキング29「人生の終わりの方(ほう)」と「始めの方(ほう)」 | メトロガイド「いい店見つけた」椎名勲の凡夫荘便り

散歩好きの私は、文京区播磨坂さくら並木に1本だけ植えられた河津桜を、

もう一度眺めたくなって、

時間をかけて歩き、見に行った。


播磨坂さくら並木公園の入口付近。

老木の下で、数人の老人が屯(たむろ)していた。


老夫婦が膝を寄せて腰掛け、
話しもせず、それぞれが、
老木の方を見ている。

ブラウンのキャスケットに、ブラックのサングラス。
オシャレじゃないか。

車椅子に乗った独りの老人が、
老木を、じっと見ている。
過ぎし日を想っているのだろうか。

それとも、(自分の)人生の終わりの方(ほう)を、
見ているのであろうか。

播磨坂さくら並木の、1本の河津桜は、
花盛りを過ぎていたが、
まだ健気(けなげ)に咲いているようだった。

今しも、保育園児の一行が、引率されて歩いてきた。
私は、しばらく立ち止まって、
園児たちを、微笑みで、見送った。

保育士と園児たちが、おしゃべりをしながら通り過ぎる間、
並木道の老木たちは、一行を見下ろしながら、寡黙に立っていたが、
園児たちが見えなくなると、
そよ風に誘われるように、細い枝先を静かに揺らして、おしゃべりを始めた。
時の過ぎ行くままに。

As time goes by
信じ合える喜びも、傷つけ合う悲しみも、いつか、ありのままに愛せるように。

・・・私どもを生かして下さるなにものかに、心から感謝します。