『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~』を観ました。 | KAJIYANのオープンな密室。

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テレ東系列の新しい深夜ドラマを観ました。

 

『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~』

原作は『校閲ガール』など話題作品を手掛けた宮木あや子さんの小説『令和ブルガリアヨーグルト』、であるらしい。

主人公、朋太子由寿(ほうだいしゆず)は、就職活動中に読んだヨーグルトを題材にした創作小説にハマり、小説内で登場する“ブルガリア菌”の大ファンになる。そんな由寿を見た“吾輩”こと乳酸菌(ブルガリア菌20388株)はパッケージから飛び出し、由寿には見えない存在として彼女にとり憑き、行く末を見守ることに。

 

と言う、少々荒唐無稽な、しかしながらテレ東らしいドラマのようです。

主演は元モーニング娘。の鞘師里保(さやしりほ)さん。最近までBS松竹東急の「土曜ドラマ」枠でテレビドラマ化された『めんつゆひとり飯』でも主演されていましたね。前回はお出汁のにんべんが提供、今回は明治乳業の協力作のようです。

 

ふざけた展開かと思いきや、1、2話では、主人公が子供の時分に体験した東日本大震災の時の「売り場に何もない怖いスーパー」の話を軸に、私たちが当たり前に考えている食品流通の安定について一石投じていました。

物語は近くの高速道路で事故が起きた関係で、主人公の担当するスーパーマーケットに競合他社のデイリー食材(今回はヨーグルト類、乳製品関係)が搬入出来ず穴をあけそうになる。そこで主人公と組んでいる先輩営業マンは機転を利かせ、これを機に自社製品を代替えに納品させようと奔走する、という流れでした。

まあ、事故に便乗したメーカーの競合合戦、と言えばそうなのですが、ここでは小売りと卸業者の間の気概、義理と人情が描かれていました。

主人公は東日本大震災、スーパーの店長は阪神淡路大震災の経験者で、揃って滞る食品流通の恐怖を思い出します。最終的に「スーパーってのは、買いたいものがいつ行っても、並んでてナンボ」という言葉に着地するのでした。

 

私は震災にあった経験がありません。

が、この状況は、2001年9・11で体験致しました。

私は元々、総合スーパーの広告印刷の仕事をやっておりまして。

2001年のテロ事件の折、メインクライアントでありましたGMS、A社が、倒壊したビルで多数犠牲を出された金融機関の融資を得られず倒産。それに伴う連鎖倒産に巻き込まれた、という次第です。

ま、クライアントのA社も、弊社も。直ぐに会社更生法、民事再生法の手続きを取り、数年を掛け立ち直るわけですが(ところがどっこい、A社は追い打ちを掛けたリーマンショックで大手GMSに吸収合併されてしまいましたと、さ)それにしても、倒産直後の取引業者の商品引き上げの早いことには驚きました。

そりゃ、支払いのわからない会社に、誰が商品を卸しますか? 

普通、そう思いますよね? 

 

私は直後に、担当していたA社スーパーマーケットを訪ねました。ガラガラの陳列ケースを何とか埋めようと什器を動かしたり、隙間を開けたり。苦心する売り場担当者の涙ぐましい努力を垣間見ました。

そんな中でただひとつ、冷蔵ケースに大量の焼きそば麺が収められているではありませんか。他にも、メーカーでも卸しでもない、テナントとして入っているサンドイッチ屋さんが余分に商品を作り、個包装にして商品棚を埋めていたのです。

私はそれを見、正直、泣きそうになりました。
A社は経営的にはイマイチでしたが、当時でも珍しい、取引業者に親切な会社だったと記憶しています。

リーマンショック直前に、借金を完済したA社に伺ったところ、私のようなしょうもない、取引業者の下っ端にまで、ちっちゃな紅白饅頭が配られました。

「お祝いなんで。貰ってやってください」知り合いのバイヤーさんから、そう声を掛けられたこと。今でも懐かしく思い出します。

弊社も、いろんなところで助けてもらい、A社とは良い付き合いだったと思います。

そんなお世話になった小売店を、寂しい売り場にしちゃならない。

それが同業の、心意気ってやつです。

 

今時、そういうことを言うと笑われるかもしれませんが、昔は商売の中にも、そうした持ちつ持たれつの良い関係があった気がします。

与え、与えられながら、生きていく。

果たして今日、独り勝ちしている大手企業が、突然そんな憂き目に遭ったらどうでしょう? その時、支えてくれるのは、一体どこのどなたでしょうか? 

 

(あなたの人徳は、まだ見ぬ敵の耳にも届く)

 

 

ま、人には出来るだけ、親切にしとけって話ですね(笑)