北九州市門司区の和布刈(めかり)公園にあり、以前カフェ・休憩室として利用されていた国鉄時代の旧型客車オハフ33 488が、新たなカフェ「めかりテラス」に改装されました。

 

観光面での活性化が期待される一方、客車の内装を撤去した手法には疑問の声も上がっています。4月30日に現地の状況を見てきました。


(※店舗は5月3日にオープンしたようです。本稿ではその直前の様子をまとめています)

 

 

新たなカフェとなる和布刈公園のオハフ33 488。オープンに備えて看板などが取り付けられています=4月30日、北九州市門司区

 

 

 

オハフ33 488はJR門司港駅から北へ約3キロ、関門橋をくぐった和布刈公園潮風広場にあります。関門間で活躍した交直流電気機関車EF30形の試作車1号機とともに置かれ、門司港レトロ地区を走るトロッコ列車「潮風号」の終点・関門海峡めかり駅が隣接しています。

 

関門海峡が見渡せる周辺は、観光や散策にとても良い場所ですが、海のそばのため鉄道車両の保存には条件が悪く、2両とも腐食が進んでいます。

 

 

 

車体の腐食が目立つオハフ33 488。今回屋根は補修されたようですが、その他はほとんど手が付けられていないようです

 

 

EF30 1とオハフ33 488の解説板。文化財指定はされていませんが、これを見る限り北九州市は歴史的価値を認め「保存展示」のような扱いだったと思われますが…

 

 

 

オハフ33 488はこのたびの改修で内装が撤去されました。私が現地を訪れたのはカフェのオープン前だったため、中の様子は側窓から見える範囲しかうかがえませんでした。

 

X(旧ツイッター)では、座席が取り外され店舗のようになった車内と思われる写真が見られました。

 

 

側窓から見るオハフ33 488の車内。空調設備のようなものが見えます。大規模な「リフォーム」により客車としての内装は失われたようです

 

 

 

外観を見ると、車体への看板類の設置、一部側窓のサッシ化などが行われたほか、足回りにも新たな配管が取り付けられていました。

 

これらは「店舗」にするための改修で、腐食した車体の補修は、雨漏りしていたといわれる屋根以外はほとんどそのままのようです。

 

 

オハフ33 488の後部。貫通扉が店舗を思わせるものに変わり、右側には「P」(Pic Mekari Park)と書かれた看板が取り付けられています。左側の標識灯は以前から失われています

 

 

床下を見ると、鉄道車両とは無関係と思われる配管類が張り巡らされています

 

 

一部の側窓はサッシ化されているようです

 

 

車体の貼り紙。文化財的な扱いは見られずメッセージボードと化しています

 

 

 

今回の「めかりテラス」計画。私は知ったのは最近で詳しい事情は分かりませんが、使用許可などを巡り北九州市と事業者の間で行き違いがあったようです。

 

以前もカフェ・休憩室だったオハフ33 488の再活用は、和布刈公園の盛り上げにもなり歓迎すべきことですが、今回のケースは貴重な鉄道車両が単なる「物件」になってしまっています。

 

 

和布刈公園に置かれたオハフ33 488とEF30 1(奥)。手前に広場があり、道路を挟んだ写真右手に関門海峡が広がっています。景色を売りにした「海峡のカフェ」をめざすなら、例えばキッチンカーなどでも良かったように思いますが、客車を使う理由が他にあったのかもしれません

 

 

 

対岸に住む私はあれこれ言える立場にありませんが、「客車カフェ」の形態をとるなら車体だけを居抜きするのではなく、同車が刻んできた歴史や保存に尽力した人々の思いを受け継ぐ形にしてほしかったです。ブランディング面でもその方がプラスになったのではないでしょうか。

 

「レトロ」を売りにしてきた門司港。多くの人生を乗せて昭和を走ったオハフ33 488をただの「店舗」にしてしまったのは残念ですが、せめて今回のカフェが和布刈エリアの活性化につながっていけば…と願っています。

 

 


※2010年時点のオハフ33 488の外観と車内は以下の記事で紹介しています

 

 


※オハフ33 488と一緒に展示されている交直流電気機関車EF30 1の現状は以下にまとめています