JR西日本のICカード「ICOCA」のエリアが2023年4月1日から山陽本線新南陽(山口県周南市)以西に拡大されるのを控え、各駅では準備が進んでいます。利便性の向上に期待が高まる一方、JR九州の「SUGOCA」エリアと接する下関市では、下関駅発着のケースを除き九州方面には利用できないなど、課題も抱えています。

 

 

4月1日のICOCA利用開始まで1カ月。JR新下関駅ではカウントダウンが始まっています。都会に遅れること20年以上…ようやくといった感じです

 

 

 

もともと導入されている下関駅を除く各駅では、新たに自動改札機の設置を終えたようです。大きな機械が置かれたことで、小さな駅では雰囲気に変化が見られます。

 

 

 

自動改札機が設置された幡生駅。現在はまだシートが掛けられています。国鉄時代の雰囲気を残すレトロな駅に大きな機械が並ぶのは、時代の流れを痛感します

 

 

新下関駅はもともと新幹線が自動改札のため、在来線側(左)に導入されても幡生駅ほどの違和感はありません(写真は新幹線口)

 

 

JR九州のSUGOCAエリアの東端の下関駅は、以前から九州に合わせて自動改札機になっていました。本稿執筆時点ではこれまでどおりでしたが、3月15日から左側2基がSUGOCAエリア、右側2基がICOCAエリア対応に分けられました(ICカード出場時)。それぞれコーポレートカラーの赤、青で色分けされています。(2023.3.18加筆修正、写真差し替え)

 

 

 

サービス開始が近づき期待は高まる一方、交通系ICカードの「エリアまたぎ」の問題も懸念されています。熱海や米原と同じく境界駅の下関の場合、山陽本線ICOCAエリアから九州のSUGOCAエリアに向かう際、IC定期券以外は利用できないのです。

 

 

下関市は山口県に属しているものの、関門都市圏を形成する北九州市との結びつきが強く、人の流れも九州に向いています。新下関駅周辺は市内でも人口が多く小倉方面への直通利用も見られるので、エリアまたぎができないICカードは使い方が限定されそうです。

 

 

自動改札機導入とICOCAサービス開始にあたり、乗車パターンごとにICカードが使える・使えないケースを案内している新下関駅。これ自体は分かりやすいのですが、改札口でも「九州方面には使えません」などと、大きな文字で周知する必要があるかもしれません

 

 

 

下関ではSUGOCAの他にも、市内の路線バス(サンデン交通)が2021年3月から西日本鉄道のICカード「nimoca」を導入。ICOCAは市民にとっては3番目のブランドになります。

 

 

九州方面への直通は定期券利用の通勤・通学客が多いと思われるので、エリアまたぎができないことはあまり問題視されないかもしれません。定期外の利用者数を考えると、関門海峡越えは「切符を買って乗る」対応が現実的でしょう。しかし下関、北九州両市が一体化した関門都市圏の特性を考えると、いつかこの「見えない壁」が解消されるシステムになってほしいところです。

 

 

 

 

 

3月1日は高校の卒業式。新下関駅にはお祝いの飾り付けなどが登場していました。日頃同駅を利用する学生たちに向けた駅員の手作りのようです。自動改札機に変わっても、こういった温かい雰囲気は変わらないでほしいですね…。

 

 

 

※ICOCA開始後の下関駅などの様子は、以下の記事で紹介しています

 

 

※姉妹ブログでは国鉄末期〜JR初期の鉄道について書いています