お釈迦様は.ある時.コーサラ王国のケーサプッタという村を訪れた…
この村の住人はカーラーマと呼び習わされていた…
そして.お釈迦様が.ケーサプッタ村にやって来た事を聞いたカーラーマ達は.お釈迦様の許に集まって.こう告げた…
[師よ…
様々な修行僧や婆羅門がケーサプッタを訪れます…
彼らは自らの教義だけを説明し.明確にし.他の教義を軽視し.軽蔑し.糾弾し.侮ります…
その後に.また別の修行僧や婆羅門が訪れ.同じように.自らの教義だけを説明し.明確にし.他の教義を軽視し.軽蔑し.糾弾し.侮ります…
しかし師よ.私達はこうした尊い修行僧や婆羅門のうち.誰が真実を語り.誰が偽りを語っているのか判らず.いつも戸惑っています…]
それに対して.お釈迦様はカーラーマ達に.次のような助言を授けられました…
[カーラーマ達よ.貴方達が.疑い.戸惑うのは当然である.何故なら.貴方達は疑わしい事柄に疑いを抱いたのだから…
カーラーマ達よ.伝聞.伝統.風説に惑わされてはならない…
教典の権威.単なる論理や推理.外観.思弁.うわべ上の可能性.[これが私達の聖なる師である]といった考えに惑わされてはならない…
そうではなく.カーラーマ達よ.貴方達が自分自身で.忌わしく.間違って居り.悪いと判断したならば.それを捨てなさい…
貴方達が自分自身で.正しく.良いと判断したならば.それに従いなさい…]
お釈迦様は修行僧にも.自らが師事する人の真価を十分に得心する為には.例えそれがお釈迦様であってもよく吟味すべきであると仰っています…
疑いとは.真理を明確に理解し.精神的に進歩する為の[五つの妨げ]の一つですが.ここでいう疑いとは[疑心暗鬼]であり.それ処か.全ての悪の根源は.無明(無知)であり.誤解であり.疑問や戸惑い.疑問.躊躇いがある限り.進歩できないのです…
物事が理解できず.明晰に見えない限り.疑問や戸惑いは付いて廻るのですから…
それ故に.本当に進歩する為には.疑問を無くす事が不可欠であり.疑問を無くす為には.物事を明晰に見る事が必要なのです…
[疑わずに信じるべきである]という言葉は.的を射てはいない…
私は信じるとは.本当に物事を理解し.見えていると言う事ではなく.真理へと向かう為には.疑問を無くしてゆく心掛けが.必要なのですから…