西武鉄道ワフ51形覚え書き | 書斎の汽車・電車

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 西武鉄道の木造ワフ、ワフ51形の模型化に向けてあれこれと資料を集めました。今回はその一端をご披露しようという訳です。

 

 西武ワフ51形(51と52の2輛)、元々は戦時中に不要不急線として廃止された成田鉄道のワブ1形(1・2)でした。ワブ1が大正14(1925)年製、ワブ2は昭和2(1927)年製で、8t積でした。これを戦時下で輸送量が増大していた武蔵野鉄道が譲り受け、ワブ11形(11・12)としました。その認可が昭和19(1944)年12月30日(!!)、いくら米英との伸るか反るかの大いくさの最中とはいえ、昔のお役人は随分仕事熱心だったのですね。なお、武蔵野鉄道では10t積になっています。

 

 戦後、現在の西武鉄道が成立しまして、昭和22(1947)年6月30日、貨車の大改番が行われます。旧武蔵野鉄道ワブ11形は、ワブ51形(51・52)となりました。後に「ワブ」は「ワフ」と改められまして、ワフ51形が誕生しました。

 ワフ51形はその後も西武鉄道の貨物輸送に活躍します。7t積のワフ11形は昭和30年代前半に地方私鉄に譲渡された車輛もありましたが、10t積のワフ51形は重宝されたようです。

 

 昭和36(1961)年7月7日付で西武鉄道が提出した、吾野~西武秩父間の工事施行認可申請書には、この年の6月30日現在の「既認可車両一覧表」が添付されています。「ワフ」について見ると、

ワフ11 5輛 長さ6312mm 幅2410mm 高さ3240mm 自重6.3t 荷重7.0t

ワフ31 4輛 長さ6312mm 幅2540mm 高さ3490mm 自重6.3t 荷重9.0t

ワフ51 2輛 長さ6360mm 幅2600mm 高さ3230mm 自重6.0t 荷重10.0t

 とあり、ワフ51は幾分ずんぐりした車輛であったことがわかります。

 

 現役時代のワフ51の鮮明な写真としては、ネコ・パブリッシングから2010年に刊行された『情熱が生んだ鉄道模型』123頁所載のものがあります。この本、エコーモデルの車輛模型の全てを取り上げた本ですが、エコーモデルのオーナー・阿部敏幸氏が記録された貴重な車輛写真(特に貨車が多いです)を多数収録していますので、16番工作派の方以外にもお薦めできる一冊でした。ワフ51は、昭和39(1964)年1月に練馬駅で撮影されたもので、池袋線貨物列車の末尾でしっかり活躍している様子がわかります。

 この本、ワフ51だけでなく貴重な写真、資料満載です。もちろんエコーモデルのカタログとしても使えます。

 

 その後ワフ52は、昭和42(1967)年4月12日付で山形交通へ譲渡されましたが、ワフ51は恐らくヨンサントオ改正あたりまでは使用されたものと思われます。『レイルマガジン』2007年8月号の「夏の日の安比奈」という記事によれば、昭和44(1969)年7月15日現在、安比奈駅構内に廃車前提で留置されていた貨車の中にワフ51の名前もあります。また、この記事によれば、廃車となる貨車を安比奈へ回送したといいますが、その最終列車(?)にワフ51が連結されていたという話も出ていたと記憶しています。

 

 さて、ワフ51の模型化という話になりますが、ワフ11に似た車輛ということで、同じく津川洋行の「有蓋緩急車ワフ(右カバー仕様)」を買ってきて、レタリングだけ変えればいいかというと、どうもそう単純ではなさそうです。というのも我らがワフ51、妻板の窓が心もち低い位置に開いているように見えます。このあたりをどう再現するかが課題となりましょう。

 

 昔の黒い2軸貨車の話なんぞ興味ないやという方が大半でしょうが、こういう一見何の変哲もない貨車にもそれなりの物語があり、その一部(全貌とまではいきませんが)を記録している鉄道趣味人がいることがよくわかります。この趣味の奥深さを改めて認識したワフ51の来歴調査でした。