写真家の篠山紀信さんが亡くなられました。正に、「巨星墜つ」という言葉が相応しいといえましょう。
で、今回のブログのタイトルだけ見ると、「篠山紀信って、鉄道写真家じゃないよね?」と言われそうですよね。確かに、篠山さんは鉄道写真家ではありません。しかし、鉄道を写した作品ならあるぞというのが、今回のお話です。
篠山さんといえば、女性、それもヌードというイメージが強いかもしれませんが、「都市」や「建築」をテーマにした優れた作品も数多くあります。その中に、東京を撮ったものもありました。
もう40年くらい前になりますか、今となってはどこで見たのかわかりません。恐らくは何かの雑誌に発表されていたものと思われますが、篠山さんは小さな船をチャーターして、隅田川や神田川などの「水辺」の光景を川から写しておられました。「ウォーターフロント」なる言葉がブームになるよりも前でしたから、その炯眼には恐れ入るばかりです。
そうした「水辺」の写真には、鉄道が写っているものもありました。聖橋付近で丸ノ内線をとらえたものもありましたが、何といっても、今でも印象鮮明なのが、隅田川を渡る東武7800系の写真です。
鉄橋を渡る電車という、何気ないテーマではあるのですが、ここで写された7800系が実にかっこいいんです。
「7800系って、こんなにかっこいい電車だったっけ?」というのが、この写真を見たときの偽らざる感想でありました。
思えば、私も「篠山マジック」に捕らわれてしまったのかもしれません。篠山さんといえば、人物を撮るときでも、被写体のふだんは隠れている魅力までも引き出すことで知られていますが、相手が電車でも、その才は遺憾なく発揮されているようです。何しろこの写真を見て以来、東武の7800系は、私にとってとても気になる電車の一つになってしまったのです。ゆえに、「鉄コレ」で7800系が出た折にも、あれこれ考証を巡らす羽目になりました。
篠山さんの突然の訃報を耳にしてそんなことが思い起こされましたので、今回記した次第です。