都電の本をご紹介 | 書斎の汽車・電車

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 唐突な都電撮影記を書いた流れで、最近出た都電本をご紹介します。

 『全盛期の東京都電』(イカロス出版)です。

 

 都電に関しては、とにかくこの種の本がたくさん出ています。本書の構成も、まずグラフ頁で、タイトル通り「全盛期の都電」の写真を紹介しています。毎度思うことですが、とにかく都電は未発表の写真が多いですね。本書でも初めて見る写真がかなりあります。

 続いて、岩成政和氏による「東京の路面電車120年概史」という通史、楠居利彦氏の「東京都電車両ガイダンス」という車輛の概要、楠居氏と堀切邦生氏らによる「都電系統案内」という、この手の本ではおなじみの内容です。

 

 本書の構成は、確かにありふれたものですが、その内容はなかなか充実しています。岩成氏による通史は、都電の通史を色々読んできましたが、出色の出来であると思います。また、所々に挿入されたコラムも面白いです。楠居氏の車輛の記事も、主に戦後の車輛を扱っていますが、なかなかよくまとまっています。系統案内は車庫毎の紹介となっており、写真のセレクトが絶妙です。

 

 そして、タイトルは「全盛期の~」となっていますが、岩成氏、楠居氏の記事とも、荒川線のみになってからの約半世紀の記述が充実しているのも見逃せません。特に荒川線は、この10年程で車輛面で大きな変化がみられましたから、その辺りも詳しく触れているのは本書の「売り」となっていると思います。

 

 本書は、昔の都電を愛する方はもちろん、現在の荒川線ファンの方にも広くお薦めできる内容です。今年は東京の市内電車が公営化されてから110年目です。10年前に比べれば静かなメモリアルイヤーといえますが、110周年を記念した好著といえましょう。

 

 8900形です。細身で直線的なデザインは、あの8000形の再来を思わせます。また、古くは木造4000形などを想起する方もいらっしゃるのではないでしょうか?