11月26日に月蝕歌劇団主宰 高取 英 さんが急逝された。

尤もこれを書き始めた現在も、ネットでは噂の域から事実認定への過度にある段階で、未だ公式の発表はなされていない。

よって、この記事自体が日の目を見る事があるのか ? すら定かではないが、ウチの社の運命を変えたと言っても過言ではない出会いに、感謝と哀悼の意を表せずには居られなかったので、言葉を包まずに書く !

...と意気込んではみたものの、高取さんとの出会いに触れる前に、絶望的展開を迎えていた 昨秋のとある事件を吐露せねばなるまい。

それは、筋少の『エニグマ』MVにMayulaがガヤ要員として招集された帰路に齎される吉報から始まる。

本人のもとへ監督から直々に映画ヒロインへの起用を伝える電話が入った。帰宅ラッシュに重なった地下鉄で、人目も憚らずハイタッチしたのは記憶に新しい。

お世話になった周囲の方々への報告も済ませ、徐々に関連付けの初期告知も始めた。早々に台本も手にするところとなり、全てが順風満帆に進んでいるかと思われた矢先に事件は起こった。

初対面時には、「夏目の代紋を背負っている自覚を持てよ !」と、露出路線(ハナから俺が承認するワケないが・笑)を歩む2世タレントを例に取り、安易なソレに嫌悪感すら漂わせ乍ら諭してくれた監督だったのだが、「絡みのシーンで、アングル上どうしても全裸カットが必要だから脱いでくれ。」と本人に直電を入れて来た。

当然、オファー時から、「綺麗に撮りますから絡みは呑んでください。絶対に脱がせません。」と伝えられていたので、その後も何度となく確認しており、齟齬など起きよう筈もない。

「まぁ、こいつの常套手段なんだろう。」と、事務所を飛び越えた仁義無視から詰め始めたら、「脱ぐ事を承認してくれたら、この役、絶対 他に回さないから。」と、ちゃぶ台返しとも恫喝ともつかないプレッシャーをかけて来やがったので、彼がサンドバッグとして差し出して来たプロデューサーを名乗る人物から、仮に公開でもしようものなら、俺の周囲を完全に敵に回す...いやそれどころか、芸能マスコミ垂涎のウラをとって降板『させられた。』

Mayulaも俺も、この降板自体には全く未練は無かった。寧ろ、「撮られる前で良かった !」は、月並み過ぎる感想ではあるが、まさにソレだった。

だ・が !
困った事に、各方面への報告を撤回しなければならない。ま、ソレは何とかなるとしても、来年(2018年)の活動の柱を『摩訶摩瑜利』の発売と、役者復帰と伝えていた俺自身が見当を誤ったばっかりに、Mayulaにブレーキを踏ませてしまった事こそ、悔やんでも悔やみきれない現実として残ったのだった。

そうこうする内に年も明け、正月早々、件の出来事も含めて PANTAさんに相談に乗って頂いた。

御大の威光は並のソレではなく(笑)、果ては皇室の関係者にまでMayulaを御紹介頂ける行脚に帯同してくださった。そしてその一環に、高取さんへの謁見も含まれていたのであった。

折しも、姉と慕う女優、天正彩さんが月蝕に上がっていた事も手伝い、大山(たいざん)と目して臨んだ『寺山の遺伝子』とのファーストコンタクトは和やかに進んだと聞く。

一頻りの紹介が終わると、突然、高取さんが「あなた、舞台上がりますか ?」と聞いてきたそうで、Mayulaが「もー是非是非 !」と答えたところ、

「じゃ、次の主役やってください。」• • • • • • • • • • • •

当たり前だが、本人は暫く事態が把握できなかったらしい。PANTAさんに「マユ、主役だってよ ! おい。」と言われて我に復り、「どんな役なんですか ?」と言い終わるか終わらないかのタイミングで、

「梶原一騎、知ってます ? 彼です。」

え゛え゛え゛え゛え゛www !!!

こんな滅茶苦茶な事を伝える際も、高取さんは、あくまで飄々と且つ、あの少年のような悪戯心を湛えた瞳で言い放つのだから、やはりただ者ではない。(笑)

残念ながら、俺はこの時、同席していなかった。いや、『残念ながら』は今だからこそ使える表現で、当時は、臨場できなかったことが不安で不安で仕方なかった。

理由はひとつ。Mayulaが『使われる仕事(ホントは使って頂く仕事なんだけどね)』への警戒心は最高潮だったから。(苦笑)

当然の如く、俺は最短での高取さんとの対話を希望した。最初は、求めに応じた高取さんが俺とMayulaと三人によるグループLINEを開設してくれた。サブカルの祖に等しい人物と同じ空気を吸っていた氏に宛てて最初に話しかける言葉には最上級の礼を尽くしたつもりだったが、戻って来たのは、「はい。こちらこそよろしくお願いします。」と些か拍子抜けする文言。然し乍ら今となっては、高取さんとの『らしい』遣り取りのログを眺めては込み上げるものを抑えている。

一週間後にはお目にかかった。次回公演の最初の稽古日だ。本当に失礼な話だが、あの日の俺は、試すような言葉を幾つも用意して稽古場に赴いた。

大きな背中を丸めて本読みを聞き入る姿は、まさに怪人の佇まいであったが、時に発せられる指導の声はあくまで優しく、少女ひとりひとりの個性を尊重し、ダメ出しの際ですら最後は高取さんの方が「ま、いいですよ。」と、自分と相手の双方に相槌を打つことで空間を成長させていた。

この日は台本の都合がつかず、Mayulaもワルキューレの稽古に参加したのだが、シーンの概要が把握でき始めた頃、俺の中では一つの確信が生まれつつあった。

基本、野郎と大海原を行きたがる(笑)俺が、なにゆえMayulaでなくっちゃいけなかったのか ?

それは男という生物が、生理の根底にある社会性に帰属し、体裁を整えた結果、 日々表現出来なくなってゆく『永遠の少年』を具象化したいからで、これを可能にするのは、小僧の心を持ったパトスの生物=Mayulaしかない ! と思っているから。

で、芝居が進むにつれ思ったのだ「高取さんの表現って、ナンか ? 凄げぇ~似てる !」

因みに、俺は常々思うのだが、
「ラブシーンって要るか ?!」(爆)

エロ、グロ、ナンセンス...サブカルの三種の神器は高取演出にも散りばめられているが、そのもの以上のソレが表現出来るのって、男と女が裸で絡めばイイってもんじゃない。ゴシップの要素を取り払う装置としての女性劇団なのだとしたら...

色々考えているうちに「この人なら賭けられる !」と思っていた。(笑)

大体、『賭けられる』とか何だよ ?!って話で、会った瞬間に主役を即決してくださった正真正銘の大賭けが無かったら、Mayulaは今年前半の役者復帰を遂げられなかっただろうし、俺は俺で、未だ自分の見る目の無さを悔いていたに違いない。

Mayulaは、高取さんから壇上の心得と演劇人の歓びを学び、俺は、人に賭ける事の意義を取り戻させて貰った。結果、今は全てが好転している。

さっきも真由子と、「高じいの最後のツイート、競馬だったんだねぇ ?!」と盛り上がってしまった。(笑)

高取さん、俺はこれからも、どんなに苦しかろうと人に賭けることを辞めません。短い期間でしたが、かけがえのない教えを頂き、ありがとうございました。どうぞ安らかに。