因みに第2話は、祭りの話をする前の予備知識としてストックして頂きたいオハナシ。

【カルロス編第2話(前編)】

流石に四半世紀以上前の出来事なので、どの楽曲のプロモ週間だったか ?(恐らく『Stay Girl Stay Pure』か『Down Town Mystery』のいずれかだが)忘れてしまったけれど…

録画番組は、本格プロモのプレ期間を使い撮りを終える為、発売2週前にも拘らず、その日も芝浦の寺田倉庫前にて深夜1時を回る野外演奏の収録があった。

当時の多忙ぶりからすれば、テッペンから一時間程度で現場を後に出来るなんて「結構早く終わったね ?!」の部類で、皆に「お疲れ様。」を告げたカルロスも比較的リラックスしたムードで車に乗り込んだ。

また、移動時間に少しでも休憩を取らせてあげたいという社長の計らいで、一週間前に納車された…フルサンルーフ、電動リクライニング、TV(当時は画期的)、冷蔵庫完備…謂わばリムジン並の装備を施した特注ハイエース(時価400万円強)もソレに一役買っていた。

翌日の取材は午後からだったが、少しでも本人を寝かそうと、他のメンバーを残し俺は車を出す…行程の3分の2を走破した辺り 第二京浜に差し掛かる頃には、後部座席のカルロスも微睡み半分でテレビモニターを眺めていた。

左折合流すべき本線は緩やかなヒルトップに位置し、左車線に停車している仮眠タクシーが邪魔で、右方から来る車の影が見えない。それでも宅送を急ぐ俺は、10キロ程度のスピードの儘、真ん中の車線にノーズを出した。

瞬間、右方からのハイビーム(多分、坂なのでそう見えた)に目が眩む。ハンドルを切る時間が無かったので、衝突回避の為、アクセルを踏み込んで反対車線まで突っ切ろうという イチかバチかの手段に出た。

辛うじて「行けた !」と思った0コンマ1秒後、お尻が左に引っ張られる感覚と共にグワシャン !と鈍い音がする。同時に右側の重力が消え、視界が傾き始めた。状況は直ぐに把握出来た。大事故に遭った人間の多くが口にするスローモーション現象が、今まさに 展開されているからだ。

「この車は片輪走行に陥っていて、軈て横転するだろう。シートベルトをした儘では横転時の車内に立てない。先ず外せ。」

「即時脱出しないと、爆発、炎上、黒焦げもある。取り敢えずキーを抜け。」

外界の呆気に反して、沈み行くFour Million カーの中では、ロッシーニの『泥棒かささぎ』が優雅な時計を刻んでいた。