3月8日は【国際女性デー】💐

 

今週~来週のブログテーマは、女性を生き生きと描いた絵本、一歩踏み出す勇気や元気をあたえる絵本、すべての人にあらたな視点を提示する……

エンパワーメントの絵本

 

 

前回に続きまして、実在の人物を描いた【伝記絵本】をご紹介します。

 

 

 

エンパワーメントの絵本 【伝記絵本】 ~夢を貫いた女たち~

 

 

 

最近、テレビや新聞でよくみかけるニュースがあります。

「男子はスラックス、女子はスカート」が一般的だった学校の制服。その“制服の自由化”が進んでいる、というニュースです。

(参考)

 

気がつけば、「女性はスカート」「男性はズボン」というジェンダーバイアスが残る最後の現場が、子の価値観を育むたいせつな時期、毎日通う学校であったというのは......なんとも皮肉な感じがいたします。

 

長い間、違和感をおぼえる人が少なかったということ。

子どもの頃から大人になるまで、さしたる疑問も抱かずに受け入れていた自分は鈍感だなあと、あらためて気を引き締める今日この頃です。

 

 

 

 

《“なぜ我慢しなくちゃいけないの?” 因習を打ち破った女》

 

 

🌟『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』
(キース・ネグレー 作/石井睦美 訳/光村教育図書)

 

 

コラージュの技法を取り入れた、キース・ネグレーによるポップな絵。

文章も少なめなので、親子で読むのにもぴったりな絵本です♪

 

 

 

 

 

 

    

メアリー・エドワーズ・ウォーカー 

(Mary Edwards Walker)

1832-1919

アメリカ ニューヨーク生まれ

 

☆「最初にズボンをはいた女性のひとり」として知られる。

 

☆南北戦争時代に外科医として活躍した女性初の軍医。女性として唯一勲章を受けた。

 

☆医師を引退後、女性の選挙権や「好きな服を着る権利」をうったえる活動に尽力した。

 

 

 

そもそも、女の子はズボンをはいてはいけない......かつてそんな時代がありました。

 

メアリー・エドワーズ・ウォーカーは、女性が選挙権も持たず、あらゆる場面で我慢を強いられた不自由な時代に、「わたしは男性の服を着ているのではありません。わたしはわたしの服を着ているのです」と、ズボンスタイルの合理性と機能性を女性の側から主張しつづけた人物です。

 

 

画像:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)より

 

 

 

メアリーは、1832年ニューヨーク州オスウィーゴで生まれました。

父親は大工兼農夫で、奴隷制度の反対論者でもありました。当時としては非常に自由な思想の持ち主だったようです。

おそらく彼女の家では、「平等」の理念にもとづいた会話が、幼い頃から日常的にあったのではないでしょうか。

 

 

絵本に、こんな場面があります。

 

昔から女の子だけが、窮屈で重くて動きづらいドレスを着ていることを「おかしい」と思うようになったメアリー。

ある日、ズボンをはいて街へ出ていきます。

軽やかに動けるようになって、メアリーはとても幸せそうです。(はねたり、走ったり!)

 

ところが街の人々は、(男性や女性までもが)彼女を強く非難し、中には卵を投げつけてくる者までいます。

 

うなだれて家に帰ったメアリーに、父親は優しく語りかけます。

 

「にんげんって、あたりまえだと おもっていたことが かわってしまうのが こわいんだよ」

 

 

メアリーは傷つき悩みますが、非難殺到のこのズボンスタイルを、それでもやめないことに決めました。

なぜならどう考えてみても、このスタイルがたいへん機能性に優れ、合理的であると感じられたからです。

 

 

絵本の中には、メアリーを学校から排除しようと圧力を強める大人の姿、それから、

メアリーにつづき自分たちもズボンをはくようになるクラスメイトの女の子の姿が対比的に描き出されます。

 

女の子が男の子と一緒になって遊ぶ様子の、なんと生き生きと楽しそうなことでしょう。

 

 

「わたしは わたしの ふくを きているのよ!」

 

 

 

 

心理学的に人の心というものは、大きな変化を嫌うといわれています。

これは「現状維持バイアス(status quo bias)」とも呼ばれるもので、未知のものや変化を受け入れず、現状維持を望む心理作用です。

 

しかし、新しいものを受け入れず、今ある現状を保ち続ける――ネガティブな現状維持傾向は、イノベーションを起こし発展しようとする社会に停滞をもたらすものになりかねません。

 

 

弱者が(自ら)古い因習を打ち破っていくことは、もっとも困難な仕事だと思います。

初期のフェミニストの多くは、社会の中で激しい挑発や圧力を受け、屈していったといいます。

 

そんな中で、このメアリー・エドワーズ・ウォーカーという人物。

彼女の強い信念と実践がなければ、女性のパンツスタイルが今のように当たり前になる時代は、もっとずっと後になっていたのかもしれませんね。

 

 
 

「制服を着た女性が自由を保証したことを次世代に知らせてください。」― メアリー・エドワーズ・ウォーカー博士

 
 
 
 

3月8日は 国際女性デー(International Women’s Day)

女性の自由や平等について考える記念日です。

 

あたりまえを疑い、すべての人に合理性や自由が保証されているだろうか......あらためて「ジェンダー」を取り巻く様々な事象に思いを寄せたいと思います。

 
 
 

~参考文献~
歴史の中の女性. メアリー・エドワーズ・ウォーカーの伝記.(最終更新日: 2010年3月5日 レイクウッド公共図書館) 

 

こちらの論文もぜひ~

【独立行政法人労働政策研究・研修機構】

「選好や行動の男女差はどのように生じるか―性別職域分離を説明する社会心理学の視点」坂田桐子氏(広島大学教授)

 
 
 

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 絵本コーディネーター東條知美