7/18 【海の日】
☆『スイミー』(レオ・レオニ作/谷川俊太郎訳 好学社)
一匹だけ、みんなと色が違うスイミー。
彼は群れからはぐれ、海の底で、この世の美しさに目をひらかれるような体験をたくさんします。
そこではじめて、スイミーは強くなれたのかもしれません。
世界は広い。
世界には美しいものがたくさんあるんだ。
『スイミー』は、「大人になってから読み直したい絵本No.1」です。
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7/18
夏休みに……と言いつつ実は、大人の方が探求の衝動に駆られる本でした。
(絵本ではありません。こういうの、実用書っていうのかな?)
■『見つける東京』(岡部敬史 文/山出高士 写真 東京書籍)
「黒いうどんは食べとうなかった」という(笑) 京都出身の著者・岡部氏がみつけた「東京」。
異邦人だから立ち止まる。異邦人だからこそ気づけることって、たしかにあるような気がします。
盛りだくさんの例示と共に、「知ることは楽しいよ」と読者に呼びかけます。
(自由研究のヒントがもらえそう!)
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7/19
厳しい行動制限が敷かれた当時、一緒に遊べない今はせめて絵本で……と紹介しました。
列になって歩く
みんなで泥んこ
手足ベタベタ
電車ごっこ…
「いっしょ」はいいねえ。
はやくなんの心配もしないで、いっしょに遊びたいねえ。
☆『いっしょにするよ』(風木一人/たかしまてつを KADOKAWA)
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7/20
☆『夜のあいだに』(テリー・ファン&エリック・ファン 作/原田勝 訳 ゴブリン書房)
一晩に一つずつ、人知れず。
枝を刈り込んだ様々な動物(トピアリー)が出現します。
夜の間に、いったい誰が……?
不思議で素敵なサプライズは、町と人に変化をもたらします。
はっとするほどに美しい、この表紙絵をごらんください!
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7/23
夢中で蝶を追いかけているうちに、生い茂る草に取り囲まれてしまう少女。
目を瞑ると、
草の匂い
川の音
鳥の声
虫の気配……
ほんの束の間、たった一人で対峙する「世界」。
時を切りとったサイレントムービーのような絵本。
◇『くさはら』(加藤幸子文/酒井駒子絵 福音館書店)
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7/24
作品には作者自身が否応なく映し出されるもの、だとすると……
地平線の向こうに長新太さんが見たものは、なんだったのかな。
憧れ
現実
希望
ナンセンス…?
はじまりと終わりに「見てんぞ」の子どもの目。
意味は知らない。
◇『ちへいせんのみえるところ』(長新太 作/ビリケン出版)
「ページターナー」という言葉があります。(どんどんページをめくりたくなってしまうほど)おもしろい本、といった意味。
絵本の魅力を思う時、最初に思い出す言葉です。
『ちへいせんのみえるところ』は、私にとって究極のページターナー。
あなたには何が見えますか?
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7/25
2017年、仲間と(おそらくどこよりも早く)「絵本の〇〇年」を総括するイベントを開催しました。
時代と共に「これまで」「これから」をみつめ、実際の作品を手に取りご覧いただける場を作り出せたことは、私の誇りです。
最近、講演先で、「あのイベントが忘れられない」「自分の転機になった」とお声いただくことが続いております。
心から嬉しく思います。
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7/26
☆『まんぷくよこちょう』(なかざわくみこ作/文溪堂)
……すごいです!
ここまでつぶさに野菜の一つ一つ、惣菜の一つ一つまで描き込まれた絵本はなかなかありません。
遊び心もふんだんに散りばめられています✨( ⓿ᴥ⓿)
商店街と、そこに暮らす人々を生き生きと描き出す作品。
奥に進めば進むほど、渾然一体・多層な魅力が幾重にも連なっていく横丁と同様、絵本『まんぷくよこちょう』も、中を読み進めてはじめて、この圧倒的な魅力が理解できるのではないでしょうか。
「ちょっとくらくて どきどきする」小路の飲み屋もしっかり網羅(*•̀ᴗ•́*)👍
馴染みの店で、
いつもの顔で。
その幸せをあらためてかみしめたい。
(追記)
奥付「作者のことば」に、まんぷくよこちゅうは架空の横丁だが2012年頃のハーモニカ横丁(東京・吉祥寺)や仲見世商店街(東京・立石)を主に取材……と記。
迷路のように入り組んだこの造り。たしかに。
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7/27
(5年前の記事ですが)夜中にそっと置いていきます。
大人の仕事だって、最初はひな型を真似て学ぶのですから。
お気軽にどうぞ~( ◜ᴗ◝)و✎
🌟 読書感想文でおいつめられている子どもたちへ~《 緊急用☆さっさと埋める感想文マニュアル》
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7/28
はじめから終わりまで泣いた漫画を。
🌙『泣きたい夜の甘味処』(中山有香里/KADOKAWA)
熊と鮭が営業する、夜だけ開くお店。
提供されるのは温かい飲み物と甘い物が一品だけ。
〈今日は散々な日だった…
少しでも優しくされたら泣いてしまいそうな日だ〉……
人生が交差する場所。
私みたいな彼ら。
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7/29
農繁期、大人が仕事をする間、私は山の子供だった。
手足の傷をどくだみで手当しながら、駆け回って遊んだ。
夏
祖母は鎌を振り下ろし、沢で冷やした西瓜をぱかっと割った。
ぬるくて甘い匂い。
山になんでも教わって
山の子どもはおおきくなる。
☆『みずくみに』(飯野和好 作 小峰書店)
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7/30
ぼんぼりの灯、葦笛の音、盆踊り……
河童の祭りの餅を食べて人間界を忘れてしまったおっきょちゃん。
河童の子ガータロと人間の子、ひと夏の友情が切ない〈行きて帰りし物語〉。
何度もせがまれては読んだ、我が家の一冊です。
☆『おっきょちゃんとかっぱ』(長谷川摂子 文/降矢奈々 絵 福音館書店)
子供(おっきょちゃんとガータロ)が、自分たちの力で問題を解決していく様もかっこいい✨
降矢奈々の描く揺らめくような水彩画、祭りのシーンは必見。模写したこともあるくらい好きです。
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7/31
◇『ゆめくい小人』(ミヒャエル・エンデ作/アンネゲルト・フックスフーバー絵/佐藤真理子訳 偕成社)
〈まどろみ国の人びとは、ねむることが いちばんだいじな しごとです。でも、たいせつなのは、ながくねむることでは ありません。ぐっすり ねむることです〉
……
けれどもこの国のお姫さまは、怖い夢におびえるあまり、うまく眠れず体を壊してしまいます。
ぐっすり眠る者こそが長にふさわしいとされるこの国で、心配する王さまも次第に眠れなくなってしまい……?
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エンデの物語を絵本化するのは、きっと至難の業。
同じドイツのアーティストであるフックスフーバーが、この魔法に充ちた世界を、不穏を、欲望に忠実な小人のキャラクターを、見事に描き出しています。
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今月の百景より
連日オーブンの中にいるような暑さ(熱さ)です。どうした地球。
皆さまにおかれましては、どうかくれぐれもご安全に!
私もちゃんと寝ます。
絵本コーディネーター東條知美