12月も半ば。なにかとお忙しい方々の増えてくる季節ですね。
自分自身のイベントを無事ふたつ終えたわたくし、昨日はゆったりとした気持ちで作家さまのお話を伺わせていただきました♪


来る2014年に「ねずみくんのチョッキ」シリーズが発売から40周年を迎えられます、
作者のなかえよしを先生による “大人のための”絵本講演会です。

 

高田馬場駅前の芳林堂書店さんの8階に設けられた会場は、先生の作品のファンの皆さま、
創作を志す学生さんらでいっぱいになりました。お子様をお連れの方もいらっしゃいました。

講演されたなかえよしを先生。
『僕らの絵本』
(※写真は今年1月に東條が企画進行させていただきました、下北沢B&B書店さんでのイベント『僕らの絵本~だからなんだ!』時のものです。)


おおまかではございますが、講演の内容をリポートします。

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☆ なかえよしを先生 講演会 『絵本のおはなし』 
12/14(土)14時~  於 芳林堂書店 高田馬場店 




【電子図書と紙の本】

・絵本のほんとうの良さを知らずに育つ子どもが増えてしまうようになるのではないか。

・(例えば)行列に並んで最新の電子機器を手に入れたがる人の多い風潮について、「おかしい」と思える感性が失われつつあるのも心配。

・電子図書に入れられないような本を作ればいい。こだわって作られた「オブジェのような作品」がもっとあれば面白い。
(※海外の美術書、そして先生ご自身による自主制作作品、透明なセロハン紙に印字された『ペラペラの世界』を紹介。)
(『ペラペラの世界』)





【作品のテーマについて】

子どものときと大人になってからでは読まれ方が違ってくる名作がある。(※以下、「星のおうじさま」を取り上げられて。)

・うわばみに呑まれたゾウの絵が出てくるが、これを「帽子」と言ってしまうのは、外側からの見た目ですべてを判断しようとする“大人”を象徴している。
そんな大人でも、子どもに発する言葉は影響力が大きく、子どもはそれを引きずることもあるから気をつけなければ。

・(「星のおうじさま」)作品の重要なテーマそのものをここまで直接的に、繰り返し書かれている作品は多くない。
「かんじんなものは目には見えない」「一番大切なものは目には見えない」。

・金子みすゞの詩にもあるように「見えぬものでもあるんだよ」「見えぬところにあるんだよ」(「ほしとたんぽぽ」より)。
大人になっても、見えない世界を見ようとする・・・“子ども(の目)”(想像力)を持ち続けたい。
ほしとたんぽぽ
(『ほしとたんぽぽ』金子みすゞ(詩)上野紀子(絵)JURA出版)


最新作(自主制作作品)『チコの時空間旅行』には、今まで生きてきた中で、いまどうしても言っておきたいメッセージをこめた。
「自分はなぜ、なんのために生きているのだろう?」と同じように悩んだことのある人に読んでもらいたい。





【ほんとうの大人】

・自分にとって「すごい!」と思えた出会いのひとつは、手塚治虫漫画との出会いであった。他の誰とも似ていない表現。

・まずは大人が良いものを知り、良いものを子どもに与えることが必要。子どもがもし流行っているだけの絵本を欲しがってどうしても聞かなかった場合、親はイヤな気持ちを隠さずにその本をいやいやレジで精算する姿を子どもへ見せておくとよい。子どもはその時の満足と、お母さんのイヤそうな顔つきを忘れないであろう。成長したときに、彼らがそのことをどうとらえ直すか。
「大人と子供との勝負」なのだ。

・子どもを驚かせ「かなわない」と思わせることのできるような作品、“ほんとうの大人”でありたい。

確かな目、かつ自由な目ででものを内側からも見ることができるのが“ほんとうの大人”。





【“作品”、“出会い”について】

・読み手となる対象・・・特定の子どもや人物が目の前に居て、その人を喜ばせようと一所懸命に作られた作品が長く愛されている。(「くまのプーさん」、「不思議の国のアリス」等)

・売れているから「良い作品らしい」となる、すると大勢が「評判がよいから買おう」という作品の選び方をする。そして「大勢に」「良いらしい」と言われることを目指した作品作りをする作家が増えてしまう。

・しかし例えば本屋で平積みされ「みんなが」「良いと評判の」本が、“自分だけの一冊”になりうるだろうか。

・神田の古書店に足を運べば、実に様々な作品が各々書棚に1点ずつささっている。
そこに「背表紙1センチのスペース=自分だけの一冊との出会い」があるかもしれない。

情報が溢れかえる世の中。“自分のための情報”は、与えられるのでなく、自分自身で探そう。出会いを大切に。





【“扉”】

・若き日の自分たち(※なかえ、上野)にとっての“ほんとうの大人”、瀧口修造氏。彼と生前親交のあった海外シュールレアリスムの大家マルセル・デュシャンの「扉」をモチーフにした作品は有名。自分の作品に大いなる影響を与えた。

あらゆるところに扉はある。一歩外へ出れば、あちらの世界。ここでの話も忘れられてしまうのかもしれない。
「どうか扉を出られても、大切なことは忘れられませんように。」



※(以上 講演内容を抜粋しご紹介しました。)

商品の詳細


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講演会終了後には、『ねずみくんのチョッキ』『ねずみくんのクリスマス』等の販売&サイン会が行われ、
作者のなかえ先生、絵描きの上野先生のご両名のサインを求められる皆さまが列をなしました♪




いつも大人のわたしたちにハッとした気付きを与えてくれる、なかえよしを先生のお話。

“見える世界と見えない世界” 、“ほんとうの大人”  という言葉を胸に刻んだひとときでした。




終了後には両先生、出版社の方々と「おつかれさま会」をご一緒させていただき、あれこれ本の話など・・・熱く有意義な一日となりました。(*^_^*)

なかえ先生、上野先生、どうもありがとうございました!


(絵本コーディネーター 東條知美)