わたしが通っていた幼稚園は、
「裸足で元気に園庭を走りまわりましょう!」
という方針の園だった。
でもわたしは、頑なに裸足になることを拒んでいた。
虫が怖かったからだ。
結局、靴を脱ぐことまでは譲歩したが、靴下だけは絶対に脱がなかった。
毎日靴下を履いたままで園庭に出ていたので、母は泥だらけの靴下の洗濯が大変だったことだろう。
しかし、あんなに虫が怖かったわたしが、今では虫のことを日夜考え、虫のブログを書いているとは。
人生って、何が起こるか分からないものだ。
(もちろん今でも虫は怖いし、大嫌いではある)
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これまでのいきさつ:
我が家にトコジラミがいる。
紆余曲折の末、遅効性の薬剤といわれる燻煙剤「Z」を使用した。
が、室内犬がいるので、せっかく付着した殺虫剤成分の大部分を拭き取るしかなかった。
効果半減だろうから、どうなることかと思ったが……
使用10日後、吸血被害がゼロとなった。
トコジラミに勝利したかと歓喜するものの――
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ついに吸血被害がゼロになった、と喜んだのも束の間。
その4日後から、再び吸血被害が始まった。
ううう。
やはり、そう簡単にはいなくならないか。
当たり前かもしれない。
そもそも殺虫剤成分をかなり拭き取ってしまい、効果は半減しているのだろうから。
それにしても、いったん被害がなくなり、しばらくして復活するというのは――
ひょっとすると、もしかして。
燻煙したときは卵だったものが、孵ったタイミングなのだろうか。
卵には殺虫剤成分が効かないというし。
だけど、謎が一つある。
「Z」の殺虫剤成分には残効性があるのだ。
ということは、卵には殺虫剤成分が効かなくても、孵化したあとには効くはずではないか。
この謎を解くカギとなるかもしれない書き込みをネット上で見つけた。
それは、
「Zは成虫には劇的に効くが、幼虫には効きにくいのではないか」
というものだ。
トコジラミの成虫は腹を擦って歩くが、幼虫は腹を擦って歩かない。
その差が、体への殺虫剤成分の付着率の差を生み、効き目に差が出ているのではないか、という推察だった。
ネットの書き込み情報なので、その歩き方が事実かどうかは不明だ。
でも実際、体験談を読んでいると、
「Z使用後に劇的に被害はなくなったが、ときどき幼虫に刺されたような小さな虫刺されがある」
と書き込む人を何人も見かけた。
「幼虫には効きにくい」という推測には信憑性があるような気がする。
もともとわたしの場合、成虫だろうと幼虫だろうと、トコジラミに刺された跡は小さい。
あるいは、ほとんど跡は残らない。
そして、痒みはごく軽い。
なので、今回の刺され跡が幼虫によるものか否かは分からない。
けれど「幼虫によるもの」と考えると、他の人たちの体験談と整合性が取れる気がするのだ。
そして、もしこれが(成虫は全滅して)幼虫によるものだとしたら。
未来はそう暗くない気がする。
なぜなら幼虫は、いつか必ず成虫になる。
成虫になった暁には、残効性のある薬剤の上を「腹を擦りながら」歩くことだろう。
そうしたら、きっと。
きっと……!
それにしても。
燻煙後、せっかく床や壁に付着した殺虫剤成分のかなりの部分をルディのために拭き取ってしまったにもかかわらず、この効果。
「Z」って、すごくないか!?
トコジラミとの戦いの模様を最初から読むには↓