愛犬・ルディと初めて会ったとき、抱き上げた夫の手をルディはペロリと舐めた。

 

その一瞬で夫はメロメロになり、ルディを飼うことを即決したのだった。

 

たった一舐めで一生涯の衣食住をゲットするとは。

 

ものすごい優秀な「いただき女子」じゃないか。

 

それから16年が経った今でも、夫はいただき女子・ルゥちゃんに夢中で、溺愛している。

 

 

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これまでのいきさつ:

 

トコジラミと戦うトトリ。

 

なかなか姿を見せず、吸血を続けるトコジラミ。

 

ついに、マヌケで不注意な一匹のトコジラミが粘着シートにかかって捕獲成功。

 

*****

 

 

 

 

ルディは、夫がいるときは夫のそばから離れない。

 

そして、いつも二人(一人と一匹)は、いちゃついている。

 

毎日お世話をしているのはわたしなのに。

 

夫がいるときは、わたしの方へは来やしない。

 

まったく理不尽なことだ。

 

ねぇ、ルディ。

 

女子と男子に対して態度変えるの、良くないよ?

 

 

 

 

だけど、ルディ。

 

今こそ、わたしの毎日のお世話に対しての恩返しをするときがきたようだ。

 

今だ。

 

今こそ、犬としての底力を見せておくれ!

 

 

トコジラミのついた粘着シートをルディの鼻先に寄せてニオイを嗅がせようとしていたところ、夫がリビングに入って来た。

 

 

「ちょっと、何やってんの!?」

 

 

「え、いや、ルディがトコジラミ探索をしてくれないかなーと思ってさぁ」

 

 

えへへと笑うわたしの前から、奪うように夫がルディを抱き上げた。

 

 

「できるわけないでしょーが!」

 

 

 

 

トコジラミの居所特定は、業者でもなかなか難しいという。

 

多数発生しているならまだしも、うちのようにまだ数が少ない場合は。

 

しかしある業者には「トコジラミ探知犬」なる犬がおり、90%の精度でトコジラミを見つけられるのだそうだ。

 

できることなら是非その犬に来ていただきたいが、トコジラミ探知犬に頼めるのは宿泊施設などで、一般家庭は対象外らしい。

 

 ああ、残念。

 

 

 

 

「――というわけで、我が家のトコジラミ探知犬に、探知をお願いしたくてね」

 

 

「いや、何の訓練も受けてないルゥちゃんにそんなこと出来るわけないでしょうが」

 

 

「だから、訓練を始めようかと」

 

 

「ルゥちゃんは人間の年齢にしたら80歳だよ。おばあちゃんに何させるんだ」

 

 

 

 

そりゃまあ、わたしだって本気でルディが見つけてくれるとは思ってないよ。

 

ちょっと現実逃避してただけ。

 

だってさー、ルディがいるから殺虫剤は使わないという方針だと、粘着テープ以外に出来ることなんてなくない?

 

そして粘着テープは、とりわけマヌケで不注意なヤツしか引っかからないみたいだし。

 

手詰まりじゃない?

 

 

ここで、夫が予想外の提案をしてきた。

 

 

 

 

「分かった。

 

じゃあ……

 

 

トトリは、

 

 

 

トコジラミのブログを書くといいよ

 

 

 

はぁ????

 

何その提案。

 

意味が分からない。

 

 

トコジラミの駆除とブログに、いったい何の関係が?

 

 

 

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