もうすぐ同窓会があることをルカさんに話すと、ルカさんはこう言った。

 

 

「トコジラミのこと話しなよ! きっと注目の的だよ! トコジラミが家にいる人なんてそうそういないしさ~」

 

 

いや……

 

そりゃ、みんな話は興味深く聞いてくれるかもしれないけど。

 

わたしからススっと(物理的な)距離を取ると思う。

 

「服にトコジラミついてないでしょうね……?」

 

という不安を抱きながら。

 

 

「トコジラミ体験なんて聞く機会ないから、みんな聞きたいと思うけどな~」

 

 

さわっち先輩の件といい……

 

ルカさんのアドバイスはわたしの想定のななめ上をゆく。

*****

 

これまでのいきさつ:

 

うちにトコジラミがいる。

 

ベッド上に来ないよう、マットレス側面を囲うようにハエ取り粘着シートを設置するも、吸血被害止まらず。

 

天井から落下して刺しに来ないよう、天井を囲うようにハエ取り粘着シートを設置するも、やはり被害止まらず。

 

どこから刺しに来ているのか分からず、苦悩するトトリ。

 

一方、夫は何かに気づいたようで……?

 

*****

 

 

 

「天井から真下に向かって飛び降りなくても、壁から来れているのかもよ」

 

 

夫の推測に、わたしは首をひねった。

 

ベッドと壁は、密着させていないのだ。

 

壁から来られるはずはない。

 

 

「壁から直接来るんじゃなくてさ。壁の上の方から飛び降りて、ななめ下のベッドに着地してるとか。モモンガ方式で」

 

 

なんと。

 

夫が「モモンガ方式」という新たな戦法の可能性を示唆してきた。

 

天井から真下を狙う落下傘方式ではなく、壁からななめ下を狙うモモンガ方式か。

 

 

 

 

しかし、トコジラミはモモンガと違って、空気を受ける膜があるわけでもない。

 

そんなトコジラミが、果たして壁の上部から飛び降りるだけで、ななめ下のベッドに着地できるだろうか。

 

トコジラミに、壁を強く蹴る力なんてあるのだろうか。

 

分からないが、とにかく、可能性がゼロでない以上はその道も塞いでおくしかない。

 

 

 

 

再びハエ取り粘着シートを沢山買って来て、今度はベッドの高さより低い位置に貼りつけはじめた。

 

当然、天井付近に貼りつけたシートはそのままだ。

 

なにやら部屋中が黄色い粘着シートだらけになってきた。

 

でも、そんなことはどうでもいい。

 

これで刺されなくなるのなら。

 

 

 

 

 

しかして、翌朝。

 

 

 

 

……また刺された。

 

 

なんで。

 

なんで。

 

なんで?

 

 

 

 

マットレスを登って来る陸上ルートは塞いだ。

 

天井から落ちてくる落下傘ルートも塞いだ。

 

壁から飛び降りてくるモモンガルートも塞いだ。

 

他にどんなルートがあるというのだ。

 

 

なんかもう、すごいよ。

 

すごいよ、君たち。

 

 

はい、降参。

 

降参、降参。

 

降参するから、種明かししてよー。

 

どうやって来てるのよー。(涙)

 

 

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