トコジラミの戦法。

 

「ずーっと隠れていて、相手が寝たら寝込みを襲う」

 

だいたい、その作戦自体が卑怯だと思う。

 

この卑怯者め。

 

正々堂々と明るいうちに出てこい!

 

こっちが起きてるときに戦いを挑んで来い!

 

 

わたしがそう憤っていたら、夫がこう言った。

 

 

「でもさー、もしトコジラミが正々堂々と明るいうちに戦いを挑んできたら、トトリはスチームクリーナーか殺虫剤で応戦するわけでしょ?」

 

 

まあ、そうだね。

 

 

「丸腰の相手に対して武器を使うのは、卑怯じゃないわけ?」

 

 

……。

 

 

 

*****

 

これまでのいきさつ:

 

トコジラミへの対抗措置として、ベッド側面にハエ取り粘着シートを隙間なく貼りつけた。

 

しかし、吸血被害はなくならない。

 

*****

 

 

 

 

ベッド側面に貼ったハエ取り粘着シートに、トコジラミはかかっていなかった。

 

奴らは粘着シートを回避している。

 

1匹も罠にかかっていないのだから、「ここは粘着力があって危険!」と分かるはずもないのに、なぜ「ここは歩かない方がよい」と分かるのだろう。

 

不思議すぎる。

 

 

とにかく、トコジラミ軍はベッド側面のハエ取り粘着シートにかかることなく、敵軍からの食糧強奪(わたしの血液チューチュー)を続けていたのであった。

 

 

 

 

「もしかしたら、天井から落下して刺しに来てるのかもなぁ」

 

 

カズキさんは、そう推察した。

 

 

トコジラミは、天井から獲物めがけて落下する作戦を取ることもあるという。

 

わたしはトコジラミ落下傘部隊によって被害にあっているのだろうか。

 

でも、そうだとしても、やっぱり不思議なことがある。

 

天井から落下してわたしの血を吸ったトコジラミは、その後どうやって巣に戻ってゆくのだろう。

 

巣がどこにあるのか知らないが、ベッド側面の粘着シート上を歩かなければ帰れないだろうに。

 

 

 

 

「じゃあさ、一度天井から落下してきたトコジラミは、巣に帰らずにずっとベッド上にいるっていう可能性はないか?」

 

 

「うーん、それはどうでしょう……」

 

 

ベッド上にあるものは夫の枕(ブランケットとタオルを畳んでマクラカバーに入れたもの)と掛け布団だけだし、それらはこまめに乾燥機にかけているからなぁ。

 

 

ここで、カズキさんが恐ろしいことを言った。

 

トコジラミに関する話題の中で、わたしが最も恐れおののいたことを。

 

 

「そういえばトコジラミってさ、犬の耳の中にも潜んだりするらしいよ」

 

 

!!!!!

 

 

やめて!!

 

それだけはやめてーーー!!!

 

 

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