パソコンでブログを書いていたら、後ろから夫がのぞき込んできた。

 

「ブログ書いてるの?」

 

わたしは慌てて画面を隠す。

 

「見ないでよ」

 

「なんでー。ブログって全世界に公開されてるんだから、誰が読んでもいいものでしょ?」

 

「違いますー。わたしのブログは限定公開してるものなんですー」

 

「そうなの?」

 

そーです。

 

 

わたしのブログは限定公開なの。

 

「夫以外の人」限定で公開しているブログなの。

 

だから夫だけは見ちゃダメなの。

 

*****

 

これまでのいきさつ:

 

我が家にトコジラミがいる。

 

トトリは毎晩のように刺されているが、刺され跡も痒みもたいしたことはない。

 

*****

 

 

 

 

 

ルカさんはわたしの大学の先輩だが、それ以前に、高校時代の部活の先輩でもある。

 

(ちなみにカズキさんは、大学でのルカさんの同級生)

 

そのルカさんから、こんな連絡が来た。

 

 

「さわっち先輩、ついに実家のクリニックを継いだらしいよ。ちょうどいい機会だから、トトリ、行ってきなよ!」

 

 

さわっち先輩というのは、同じく高校の部活の先輩だ。

 

わたしが入学した当時、さわっち先輩はすでに高校を卒業したOBだったが、行事のときなどに顔を出してくれていたのでそれなりに交流はあった。

 

というか、実を言うと、当時のわたしの憧れの人だった。

 

 

 

 

 

 

医大に進学し、のちに医師となったさわっち先輩。

 

長らく勤務医をしていたが、このたび実家のクリニックを継いだそうだ。

 

 

 

しかし、「ちょうどいい機会」って、何が?

 

「行ってきなよ」って、なぜ? 

 

なんのために?

 

 

 

「クリニックを継いだお祝いに行ってきなという意味ですか?」

 

 

「そうじゃなくて。さわっち先輩、皮膚科でしょ。トコジラミの刺され跡、見せに行ってきなよ」

 

 

は?

 

 

「トトリがトコジラミに刺されたのと、さわっち先輩が皮膚科のクリニックを継いだタイミングが重なるなんて、すごい運命的じゃない?」

 

 

はぁ??

 

 

「かつての憧れの君に診察してもらってきなよ♪」

 

 

はぁぁぁ???

 

 

 

 

いやー、あのですね。

 

まず第一に、わたしの刺され跡は医師に診てもらうようなレベルではないし。

 

仮に医師に診てもらうようなレベルの刺され跡だったとしたら、かつての憧れの君にそんなもの見せたくないし。

 

それより何より……

 

 

「うちにトコジラミがいるなんて、さわっち先輩に知られたくないに決まってるじゃないですかー!」

 

 

 

 

 

どうしてわざわざ、うちにトコジラミがいることをお知らせに行かなくてはならないのか。

 

 

「そっかー。トトリ、トコジラミのせいで凹んでるっぽいから、かつての推しに会ったら元気が出ると思ったんだけどなー」

 

 

そりゃ、推しに会えたら、それは嬉しい。

 

ちょっと元気が出るかもね。

 

 

だけど、トコジラミがいるなんて!

 

推しには絶対に知られたくないことですわ!

 

 

 

「うちにトコジラミがいる」

 

 

恐ろしきこの事実。

 

あなたは、誰になら言えるだろうか。

 

 

トコジラミとの戦いの模様を最初か読むなら↓