世のお母さま方に伺いたい。

 

もしお子様から『手のひらを太陽に』の歌詞を引き合いに出し次のように質問されたら、どうお答えになるのか。

 

「ミミズだってオケラだってアメンボだって友達なのに、トコジラミは友達じゃないの?」

 

 

みんなみんな生きている。

 

生きとし生けるものはみんな友達だと歌わせておきながら、自分たちに害を与えるものは例外で、生きていても友達ではないというのか。

 

なんとも勝手な話だ。

 

 

ちなみにわたしはトコジラミとは友達ではないが、ミミズやオケラやアメンボも同様に友達ではない。

 

 

*****

 

これまでのいきさつ:

 

「血糞」と呼ばれるトコジラミの糞をベッド裏に見つけたトトリ。

 

しかし、夫はそれが血糞だとは信じていないようだ。

 

*****

 

 

 

「血糞が見つかった以上、すぐにベッドを捨てよう!」

 

「いいよ」

 

わたしの提案に、夫は意外にもアッサリ同意した。

 

「え、いいの?」

 

良かった!と思いきや……

 

「じゃあ、さっそく新しいベッドを買いに行こう」

 

夫は当然のように新しいベッドを購入する気でいた。

 

 

違うってばー!





「ソファのときも言ったけど、せっかく捨ててもトコジラミ撲滅前に新しいのを買ったら意味ないよ」

 

新しいベッドにトコジラミがつくだけだから。

 

新しいものを買うのは、撲滅してからにしないと。

 

「じゃあ、ベッドやめて布団にする?」

 

「布団もダメ。敷布団は乾燥機にかけられないから」

 

「じゃあ、どうするの」

 

「いい物があるの!」

 

わたしは購入しておいた「あるもの」を出してきて、夫に見せた。

 

 

 

 

「ほらこれ! 寝袋!」

 

寝袋なら、毎日乾燥機にかけることができる。

 

たとえトコジラミがついたとしても、乾燥機の熱で毎日一掃できるのだ。

 

なんという安心な寝具!

 

これに勝るものナシ!

 

わたし、いいもの買った!

 

……と、思ったのに。

 

「えー、寝袋生活なんて嫌だよ。疲れが取れない」

 

「……」

 

 

そうだった。

 

夫は寝心地にこだわる人なのだ。

 

 

 

 

一応、評判の良いものを買ったんだけどさ……

 

しょせんは寝袋だしね……

 

こだわって購入したマットレスの寝心地に勝てるわけはない。

 

 

「ベッドは捨てていいから、すぐ新しいの買おう。大丈夫だよ」

 

のんきにそんなことを言う夫は、分かってないと思う。

 

トコジラミの恐ろしさを!

 

全然!

 

分かってない!!

 

 

 

 

「ヴォルテールも言ってたよ。『神は現世におけるいろいろな心配事の償いとして、われわれに希望と睡眠を与えた』って」

 

は?

 

「今よりさらに寝心地のいいマットレスを買ってぐっすり眠れば、きっとトトリの心配事も薄れるよ」

 


……いや、あのね。

 

もしもヴォルテールの家にトコジラミがいたら、絶対にそんなこと言わなかったと思うの。

 

 

だって、まさに睡眠時こそ、最大の心配事(トコジラミ)が訪れるのだからね!!!

 

 

偉人の名言も、トコジラミの前ではしょせん戯言にしか聞こえないのだった。

 

(ヴォルテール=18世紀フランスの哲学者・文学者)

 

 

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